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2019-02-02

迷鳥(14)

ネジイエローの居場所をようやく探し当てたメガイエロー・千里は、倉庫室のドアを音高く開け放って、照明の消えた室内の様子を目に入れた。

「……リンさん……!?」
部屋の中央の椅子に縛り付けられたピンク色の戦士が、マスクの上から大型のヘッドホンと黒い長方形のゴーグルを付けられ、それらから何本ものケーブルが垂れ下がっているのを見て、一瞬のためらいの後に駆け寄ろうとした。しかし、積み上がった機材の陰に立つネジイエローの気配に遅れて気付き、その場に踏み止まった。
「ネジイエロー……! リンさんに何を!」
怒りと警戒心に拳を握り締め、メガイエローは敵に向き直って叫ぶ。
「遅かったわね。でも……実験は失敗よ。こんなジャンク品では大したことはできないようね」
うっすらと煙を上げる映像編集機器をネジイエローは指でコンコンと叩いてから、周りの様子に気づかずぐったりと脱力したホウオウレンジャーを見下ろす。マスク側面に吸い付くヘッドホンから延びている複数本のケーブルは、周りのどの機械にも繋がらずに床に垂れていた。

メガイエローはマスクの中で呼吸を落ち着けながら、無言でデジカムサーチを起動する。
ホウオウレンジャーのマスクの上に装着されているガジェット類に重なって"Hacking" "Brainwash"などの単語が点滅表示され、そして近くの机上に置かれた、ネジイエローの頭部に似た仮面に強いフォーカスが当たったのを見て、自分が到着するまでに起きたおおよその出来事を理解した。
「せめて、この娘のエネルギーだけでも利用させてもらうわ」
いつの間にかネジイエローが手にしていたのは、そのデザインからホウオウレンジャーが所持していたものと推測されるレーザーガン型の武器だった。
「う…… あぁ……っ!」
ネジイエローが片手で銃を構えると、それまでただ苦しげな呼吸音を立てているだけだったホウオウレンジャーが声を上げて呻いた。
「なっ……!?」
「知ってる? 『ダイバスター』。生体エネルギーを光線に変えて撃ち出す武器ですって」
言いながら、ネジイエローはメガイエローにダイバスターの照準を合わせ、慣れた手付きで引き金を引いた。
「きゃぁああああぁ〜っ!」
独特の発射音と共に、強烈な熱量の光線が尖った銃口から放たれ、メガイエローのスーツが腹部から火花を上げた。
「うあぁ…… ぁっ……!」
弾き飛ばされるように後ろへ倒れ、重い大型のスチールラックに背中を打ち付ける。
メガスリングにも匹敵する威力だった。発射物がスーツを貫通して皮膚まで達したかのような痛みが、煙を上げる脇腹近くの命中箇所に染み付いている。恐る恐るその場所に手で触れると、スーツの最外層部が高熱でチーズのように溶け、白いグローブの指先で糸を引いた。
「あぁ……っ!」

マスクの換気フィルターを通して、化学繊維の焼け焦げた匂いがごくわずか鼻腔に到達する。体勢を立て直そうとするが、自分では意識しなかった手の震えが来て、ズルズルと背中がスチールラックの壁面を滑り落ちてしまった。
しかしネジイエローがそこから距離を詰めてくることはなかった。その理由はすぐに判明した。ダイバスターには改造によって細い導線が接続されており、その終端は心電図検査の電極のように平たいパッチになってホウオウレンジャーの胸元に貼り付けられていたのだった。ホウオウレンジャーのスーツへ強引に有線接続された武器は、撃ち手のネジイエローではなくホウオウレンジャーから気力エネルギーを吸い上げ、高熱の光線弾を生成していた。
「まだ撃てるわね」
ネジイエローが手元で銃を操作すると、目に見えないエネルギーを吸い出されて、ホウオウレンジャーが椅子の上で荒い息遣いと共に悶えながら肩や膝をぶるぶると震わせた。
その、快楽に対する反応とも取れる異様な喘ぎ声に気を取られた瞬間に、二度目の攻撃がメガイエローを襲った。
「きゃはぁあああ〜〜っ!」
熱量と衝撃波の塊を左胸に撃ち込まれた。吹き出す火花の勢いに押されるように、座り込んでいた身体が背後の棚ごと壁際までずり退がり、大量の紙とプラスチック製品が音を立てて落下する。
「ぁうっ……! う……っ!」
左胸、心臓ではなく左の乳房の先端をちょうど狙い撃たれた。ジュウジュウとスーツごと焼き焦がされる胸を右手で覆い、メガイエローは横倒しの姿勢からうつ伏せになって背中を丸め、ぶるぶると涙を流して震えた。
「あぁ…… あ……!」

「あら、当たり所が悪かったかしら?」
冷静で皮肉っぽい口調を装おうとしながらも、サディスティックに高揚した様子を隠せず、ネジイエローは傍らのホウオウレンジャーのマスクに片手を掛けて言う。
「どう!? 貴女のダイバスターでお友達があんなことになってるわよ、見なさい!」
視聴覚を奪っていた長方形のゴーグルとヘッドホンをマスク上からむしり取り、右手に握ったままのダイバスターで床のメガイエローを指し示す。
「……」
急に意識を暗闇から解放されたホウオウレンジャーは、最初何が起こったかを全く理解できない様子だった。首を上げてまっすぐ前を見てはいるが、マスクの中で放心しているのが見て取れるような状態だった。
「え……?」
頭頂部を掴んで斜め前を向かされる。すぐには焦点の合わない視界の中央で、灰色の背景に落とされた鮮やかな黄色の色彩が像を結んだ。
「あ…… ああぁ……っ!?」
倒れたメガイエローのこと、自分の武器がネジイエローの手の中にあり、それが先程からの気力エネルギーの強制放出の理由だったことに気付くと、ホウオウレンジャー・リンの全身に怒りの波動が一気に沸き起こった。
「うあぁああっ! そんな…… 許せない……っ!」
ギュウウゥ、と、縛られた両手に力を込め、身体を震わせてネジイエローを睨み付ける。
「ふ、ふん…… そんな力で……」
勢いにたじろいだネジイエローは、それでも優位を保とうとしながら、ふと右手にまだ持っていたダイバスターに異変を感じて手元に目をやった。
その銃把に接続したケーブルが強いピンクの光を放っており、それまで使用していた時よりも数段激しい気力エネルギーが流れ込んでいることを示していた。
「これは……」
混乱して、ピンクの光から目を離せないネジイエローの手の中で、ダイバスターに注ぎ込まれた気力が破裂音と共に暴発した。

「ぐぁああ〜っ!」
正確には、爆発が起きたのは破断したケーブルだった。そこから眩しい火花が吹き出し、ネジイエローの手からダイバスターがこぼれ落ちて床に転がった。
「うっ……! うぅ…… おのれ……!」
マスクの前面を押さえ、ネジイエローはよろめきながらその場に膝をつく。
「リンさん!」
痛みのダメージから何とか回復したメガイエローが叫び、ボロボロになったスーツの胸から手を離して身を起こす。
「無事だったのね!」
「そんなことより…… とどめを!」
「は、はいっ!」
メガイエローはすっくと立ち上がり、身体にエネルギーをみなぎらせるかのようにスーツを再起動した。
マスクの内側のディスプレイに、自分のスーツが備える機能の一覧が表示される。

「ブレードアーム!」
そう叫んで、右腕の肘から指先までに光の刃を纏わせる。こちらに向き直ったネジイエローに向かって飛びかかり、反撃の隙を与えず、その肩から腰までを袈裟懸けに切り裂いた。
「がっ! うわぁあああ〜ッ!」
倒れこもうとする標的に、さらに逆からの斬撃を浴びせる。
露出した内部メカから火花を吹き出しながらネジイエローはその場に一瞬静止したようになり、しかし次の瞬間にはぐらりと膝から崩れ落ちて、前のめりに倒れた後はもうそれ以上動かず、傷口から白煙を上げるだけになった。


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コメント

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ご無沙汰しております

お久しぶりです。
実はちょくちょく覗きにきておりました!
お身体にはお気をつけて頑張ってくださいね!

Re: ご無沙汰しております

お久しぶりです!
例によって時間がかかってますが、今日明日でついに完結させて次の二次創作に取り掛かります。
プロフィール

鳥籠

Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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