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2014-04-05

鉄檻(14)

永遠に続くかのように思われた陵辱から解放されたのは、それから何度目かの絶頂の後だった。
ほとんど意識を失っていたホウオウレンジャーは、背後からの羽交い締めがふいに解けると同時に、目の前の座席へすがりつくような姿勢で投げ出された。股間にしゃぶり付いていた男はいつの間にか姿を消しており、そして車内の乗客自体がさっきまでの満員電車とは違って1割ほどしか乗っていなかった。
「あ…… あ……」
一体どれほどの時間責められ続けていたのか、疲れ切った身体には立ち上がる力さえ残されておらず、自分の愛液らしき液体が飛び散った座席に顔を埋め、走行する電車の振動を体に感じながらはあはあと荒い呼吸を繰り返す。男の舌と唇で啄ばまれ続けた股間がじんじんと痛み、背後にまだゴーマの痴漢が居たとしても何の抵抗もできないだろうと思われた。

空いた車内に車掌のアナウンスが流れた。犯され続けていた間は内容が耳に入ってこなかったその放送によれば、もう間もなく終点の駅に到着するということだった。
このゲームにおいて終点が何を意味するか、責めから解放されたばかりのホウオウレンジャーにはなかなか思い出せなかった。終点まで痴漢の責めを耐え抜けば終わりという勝負ではない。電車を降りてからがかくれんぼの第2回戦、それはつまり隠れたホウオウレンジャーを電話先生が探し、追いかけるというゲームの始まりなのだった。
今まで1回戦、追いかける立場でありながらこの有様だった。その攻守が交代すれば、ゴーマの戦闘員達の追っ手から逃げ回ることになるのだ。そして次に捕まったら、罰ゲームはこの程度では済まないだろう。いや、罰ゲームどころの話ではない。電話先生との勝負に負け、そしてダイレンジャーとゴーマ3ちゃんズの勝負がこれで全敗ということになるのだ。
鈍い痛みの残る下半身をかばうようにして、ホウオウレンジャーは何度もつまづきながら電車を降り、終点駅の薄暗いホームに降り立った。


這うようにしてホーム中央のベンチに辿り着いたホウオウレンジャーの歩みはそこで止まった。改札階から続く階段を登ってきたのは電話先生と数人のコットポトロだった。
「ア〜ラ、リンちゃん、遅かったじゃないの〜」
余裕たっぷりに姿を現した電話先生の姿は、ホウオウレンジャーにとっては死刑宣告にも近いものだった。今ここからかくれんぼ2回戦を開始されたら、歩くことすらままならない状態で数人掛りの追っ手から逃れられる訳がない。ショックで再び立つ力を失ったホウオウレンジャーはその場に膝を付き、電話先生から見下ろされる体勢になった。
「ねぇリンちゃん、終点まで待たせたからには、何か秘策があるんでしょ? さっそく2回戦を始めて……」
「ま…… 待って……!」
そのとき、ホウオウレンジャーのマスクの中に、電話先生との通信とは質の違うクリアな音声が響いてきた。
『よっ、リン! そろそろ知恵比べの勝負はついたか?』
それは将児の声だった。電話で聞いたのとは全く違う、いつもの威勢のいい調子で気力の通信を送ってきていた。
「し、将児!? 大丈夫なの?」
『は? 大丈夫も何も、あっけないもんだったぜ。神風大将の奴も結構頑張ってたけど、アイツ最後のカーブでコケちまって、そのまま川にドボンよ』
「将児は、怪我はないの!? それじゃさっきの電話は……?」
混乱するホウオウレンジャー以上に慌てた様子だったのは電話先生だった。
「ちょっと! ちょっとちょっと! どうして通信が繋がってるザマスの〜!? この駅は電波が入りやすいの?」
『怪我? 大五と和も楽勝だったって言ってたぜ?』

次第に事情が飲み込めてきたホウオウレンジャーは通信を打ち切り、すっくと立ち上がった。
「あの将児からの電話、ニセ者がかけてきてたのね!」
「えっと、その…… もしかしたら混線とか……」
「言い訳無用! 1対1の勝負っていうのも嘘だったし、もう悪知恵は終わりよ!」
知恵比べとはいえ今まで騙されていたことへの怒りに、ホウオウレンジャーは身体の不快感も忘れて怒鳴った。
「キーッ! こ、こうなったら……」
コットポトロと共に飛びかかってこようとする電話先生より一瞬早く、ホウオウレンジャーは必殺技、一文字竜巻を放った。
「はっ!!」
ピンク色の旋風がゴーマ怪人達を空中で揉みくちゃにするように振り回し、ホームから下の階へ降りる階段へと吹き飛ばす。
「ひぃ〜っ!」
転げ落ちて行った電話先生を見下ろすと、下の階にある改札口を越えて、どうやら駅の外まで飛んでいってしまったようだった。

相手の反則負けとは言え後味の悪い勝負を終えて、ホウオウレンジャーはとりあえずどうやってここから帰ったものかと、ホームの柱に貼られた複雑な路線図を眺めた。

(完)
2014-04-07

完結

「鉄檻」やっと完結しました。もっと明るい感じにするつもりだったのですが力不足でした。
最後の方は徐々に加筆修正していきます。
2014-04-07

リクエストについて

ここ数作はコメント欄や拍手コメントで頂いたリクエストに従ってSSを書いてきましたが、未消化リクエストもかなり溜めてしまっています。

先着順やこれまでに書いたネタとの重なりを考慮して、リクエストに応える大体の優先順位を勝手に決めてみました。
・エネルギー吸収のシチュエーションを
・イヤリング官女がホウオウレンジャーを責めるSS
・口紅歌姫の復讐編を、「贈り物SS」のような感じでもう一つ
・メディア魔術師の回のifストーリーとして、纏足などで奴隷化させられる話
・ヒロインを彼女として可愛がるSS

上二つはまとめて1作にすることになるかと思います。
口紅歌姫の話はリクエストとしては先に頂きましたが、現在随時更新ということにしている贈り物SSの追加エピソードとかぶってしまうため、一つ後ろに下げさせて頂きました。

また、個人的に書きたいと思っているのが
・ダイレンジャー怪人、コピー女帝の能力を使ったSS
・同じく鍵道化師のSS
・ホウオウレンジャーと他の戦隊ヒロインとのコラボSS
・ハリケンブルーvsガマジャクシのSS
といったもので、特にハリブルSSはバランス的にそろそろ掲載するべきかと思いましたが、今はリクエスト優先ということでリンちゃんにもうしばらく悶えてもらおうと思います。

この他にリクエストや、これをこうした方がいいというのがあればコメント下さい。
2014-04-08

ダイレンジャー配信中

次のSSを書き始めるまでに、雑記というか日記です。

いま、ニコニコ動画の東映チャンネルでダイレンジャーが毎週一話ずつ配信されています。金曜日に配信開始、日曜まで3日間は無料というシステムです。
先週の金曜は名ピンチエピソードの第5話(口紅歌姫登場)の配信だったのですが完全にうっかりしていて見逃してしまいました。映像自体はDVDを買ったのでいつでも見れますが、普通の特撮ファンがどういうコメントをするか見たかったのに残念です。次の第6話は口紅歌姫回の後半で、ホウオウレンジャーの単独アクションや歌声攻撃に苦しむシーンのある「神回」なので絶対見逃しませんよ。
2014-04-09

羽毛(1)

霧に包まれたゴーマ宮の一角で、シャダム中佐の息子・阿古丸が苛立たしげに歩き回っている。
六人目のダイレンジャーであるキバレンジャーの覚醒を阻止することに失敗した今、キバレンジャー・吼新星コウをゴーマに引き入れることを急がなければならない。しかしそれもまた思い通りに進まないでいる。
「何が作戦の邪魔をしているかは、はっきりしている」
机の上に並べられた写真から一枚を掴み、執務室に呼び集めた直属の部下達にそれを示した。鮮やかなピンク色の衣装に身を包んだ人物が写真に写っている。
「ホウオウレンジャーだ」
薄暗い部屋に集合した十数人の部下達の中には、その通りだと頷く者もいれば、困惑の声を上げる者もいた。コウにゴーマが接触しようとするたび彼女が居合わせ、計画の障害になってきたことを知っている者は彼らの中でも一部である。
阿古丸は写真を机に戻すと言葉を続ける。
「まずはホウオウレンジャーを片付ける。それもただ倒すんじゃない。たっぷりと時間をかけて、徹底的に痛めつけろ。私に考えがある」

阿古丸からの指示を受けた後、「地獄の三人官女」の長女・指輪官女は部屋を出て、傍らにいる人影と囁き交わす。
「阿古丸様は『徹底的に痛めつけろ』とおっしゃった」
「ならば……」
「妹よ、お前の出番のようね」

次へ
2014-04-11

羽毛(2)

ある日の昼過ぎ、リンはコウを駅まで送り届けた帰途、ここ数日の出来事について考えをまとめようと人気のない並木道を歩いていた。
キバレンジャーの出現、コウを狙うゴーマの怪人、その中でも特別に呼び寄せられたらしい「地獄の三人官女」のこと。神出鬼没に現れる三人官女とは数回戦ったものの、その能力や技の底が知れないままに戦いが中断していた。コウを一人で行動させておいて大丈夫だろうかと心配しながらの帰り道だったが、ゴーマの手はコウではなく、リンの方へ伸びていた。

風が強くなり、太陽がゆっくりと雲に隠れたとき、まるで急に夕暮れが来たように辺りが暗くなった。
「ほっほっほっほ……」
「ふふ……」
リンの正面に現れたのは、人間の姿をとった地獄の三人官女だった。扇を構え、冷たい笑みでリンを見つめている。
「三人官女! お前達の目的は何なの!」
瞬時に戦闘体制を取るリンの言葉に、指輪官女が答える。
「教えてやろう。今日の目的は……お前よ!」
その台詞を合図のように、三人官女が怪人態へと姿を変える。人間態の時よりも一回り体が大きくなり、それぞれの名の通り拳のような頭部、太い首、巨大な耳を持った異形の身体である。同時に風景が変化し、赤い霧が周り一面に立ち込めた。
「……!」
身構えるリンだったがすぐに霧は晴れ、気が付いた時には、四方を岩山に囲まれた砂漠のような荒地の中央で三人官女と元通り向かい合って立っていた。
「これで邪魔は入らない」
そう言って武器を構えようとする次女のネックレス官女を、三女のイヤリング官女が制して言った。
「お姉様方、後は一人で大丈夫ですわ。わらわがホウオウレンジャーを可愛がっている間、お二人は先に、あちらを……」
「なかなかの自信ね。なら、しばらくお前に任せるわ」
「ま、待ちなさい! 一体何を企んで……!」
去ろうとする二人の怪人にリンが叫ぶ。背を向ける怪人達に方へ一歩踏み出しかけた時、何者かに肩をがっしりと掴まれた。
「……っ!?」
「言ったでしょう、お前の相手はわらわよ」
リンの肩を掴んだように思えたのは黒い髪の束だった。イヤリング官女が胸の前に垂らしていた長い髪が数メートルにまで伸び、リンの肩から首にかけて巻き付いていた。
まるで大蛇のような太さの束だった。単に髪の毛を巻き付けられたというのではなく、イヤリング官女の意思によって自在に動かせる武器であるらしかった。イヤリング官女自身はその場から動くことなくリンを掴む力が強くなってくる。
「か、髪の毛が……!」
「ほっほっほ……」
巻き付いた髪に手を掛けるが、ゆるく縮れが掛かり羊毛のように柔らかい髪の流れに指が埋まり、振りほどくことはできそうにない。髪は少し体温を感じるほどに生温かく、一本一本が一つの生物個体であるかのように髪束の表面がざわざわと動いていた。
「気力……転身!!」
手を封じられる前にと、リンは両手に装着したオーラチェンジャーを作動させ、髪に縛られたままでホウオウレンジャーに転身した。

次へ
2014-04-12

羽毛(3)

転身すると、首元や肩を強く締め付けられている苦しさからは逃れられた。しかし、先程までのブラウスにジャケットという服装は違って、素肌の上に直接着ているスーツの上から髪束でさわさわとくすぐられているような感覚が代わりに襲ってきた。
「このおっ!」
巻きついている髪を手で掴むが、見た目よりも柔らかく手応えのない髪は、転身して強化された力でも引き千切れそうにない。
「そう、もっともがくのよ!」
これくらいなら大丈夫だろうとばかりに、イヤリング官女が髪を引き絞る強さをじわじわと上げていく。スーツの防御力でやっと耐えられるような強さで喉元を締められ、ホウオウレンジャーは息苦しさに呻き声を上げる。
(素手では無理だわ…… この髪を切るには、あれを……!)
ホウオウレンジャーは両の手に武器を取り、気力を込める。
「大輪剣!」
高速回転する円形の刃を自分と怪人の間に伸びている髪へ叩き込むと、黒い毛束が音を立てて切断された。
「うあぁっ!」
イヤリング官女の悲鳴が響き、ホウオウレンジャーの首に巻きついていた髪がはらりと解けて足元に散らばる。残った髪を振り払うと呼吸を整え、反撃の構えを取った。

「どう? そんな髪の毛、いくらでも切ってあげるわ」
二つの剣を両手に携え、ポーズを決めて見せるホウオウレンジャーだが、その内心では先程の一撃で感じた髪の強度に脅威を感じていた。手で直接触れた時の印象とは全く違う、金属にぶつかったような手応えだった。大輪剣は気力で刃を回転させ針金や鉄線であれば軽く斬り裂いてしまえるはずの武器だが、今のはこれまで感じたことのない硬さだった。
「なら、これはどうかしら?」
イヤリング官女が頭に手を当てると、切断された部分から煙を上げていた髪が再び大きくうねり出し、ホウオウレンジャーの方へ向かってくる。今度は綱のような一本の束ではなく、髪がほどけたままで伸びて襲ってくる。そして、大蛇が口を開けるように目の前で大きく広がり、ホウオウレンジャーの視界を覆った。
「はぁっ!」
全身を包み込もうとするような髪の動きを避けることはできない。ホウオウレンジャーは逆にその髪の中へ飛び込んで行った。そして体の気力を両手の剣に注ぎ込み、舞うようにして髪の塊を斬り付ける。
「大輪剣・旋風斬り!」
一撃、二撃と、絡み付いてこようとする黒い髪を断ち切っていく。だが明らかに、髪の毛を切っている感触ではない。グラインダーやチェーンソーで金属を斬り付けているように、力任せに切断しているのに近い。大輪剣を振るうたび火花が散り、焦げたような煙が上がるのは、髪から発せられたものだけではなく、剣の方が悲鳴を上げているに違いなかった。
四方八方から伸びてくる髪に、手足を巻き取られる直前で危うい反撃を繰り返す。このままのペースで全力で斬撃を続ければ剣も、自分も無事では済まない。身体を斬られているはずのイヤリング官女には大したダメージを受けている気配がないのに、攻撃している側のホウオウレンジャーは体力や気力を急速に削られている。
「いくらやっても無駄よ! こんなの、早く諦めなさい!」
それを相手に悟られないようにと大声で叫ぶが、その声には焦りのためにむしろ助けを求めるような調子が現れてしまう。根元から何時でも再生するイヤリング官女の髪の毛に対して、大輪剣の刃は短時間での使用しか考えられていない。斬り付けるごとに細かな刃こぼれが増え、威力が減って行くのが使用者には分かる。
「たぁっ! あ、あぁっ!」
髪の壁を突破し、少しでもイヤリング官女の本体に攻撃を与えようと右手の剣を叩きつけた時、武器が髪の中へ食い込むような妙な不自然な手応えが伝わってきた。大輪剣の銀色の円形刃に明らかな亀裂が走っているのに気がついた時には、右手の手首までが剣を握ったまま完全に髪の中へ埋もれてしまっていた。
まずい、と思い、力を込めて手を引き抜こうとするが、そのために剣の回転機構が作動し、切り裂くことのできない髪が何重にも剣に絡み付いていく。
「うぁあっ! 違……っ!」
大輪剣の回転力で右手首や指を捩じりあげられ、転倒しそうになりながら肘の手前までを髪の中へ巻き込まれる。痛みと、毛髪の生温い感触が右手全体に広がり、思わず左手をそちらに伸ばしてしまう。しかしそのため、左に握ったままの大輪剣、その高速回転中の刃を自分の右腕へ勢いよく押し付けてしまう。
「ぐぁああっ!」
皮肉にも刃の先端が完全に荒れて切れ味を失っていたため、スーツ表面に熱を感じただけで助かったが、完全に体勢を崩し、髪の毛の中に倒れ込んだホウオウレンジャーは再び首を締め付けられ、首吊りのように空中へ持ち上げられた。

次へ
2014-04-13

羽毛(4)

スーツの白い首回りにしなやかな黒髪の束がきつく食い込み、小柄な体とは言え全体重が首に掛かった状態である。そこへ、スーツの耐久性を超えて締め付けが強くなっていく。
(な……なんて力なの……!)
ズキズキと痛む右手には力が入らず、左手も首回りの髪を掴むために武器から手を離してしまっていた。そのため大輪剣は二つとも、ホウオウレンジャーの足元の地面に転がっていた。
ようやく動くようになった右手と左手で首締めを外そうともがくホウオウレンジャーの身体を、爪先が地面へ付かないほどの高さに保ってゆらゆらと動かしながら、イヤリング官女はもう二本の髪束を伸ばし、それぞれに大輪剣を拾い上げる。
「なるほど……」
「それは……っ!」
可動部のあちこちに髪の毛の断片や砂が食い込み使用不能になった剣を見せ付けられ、それでもそれを取り返そうとするホウオウレンジャーの手がわずかに届かない場所で、イヤリング官女の髪が剣を握り直すような動きを見せる。すると、そこで大輪剣の刃が回転し始めた。
「そ……そんな……!」
気力の使い手でなければ使えないはずのダイレンジャーの武器である。しかしイヤリング官女はそれに妖力を流し込み無理矢理に作動させているようだった。異物が食い込み無残な姿になった大輪剣の刃がガリガリと音を立てながら回る速度を上げる。だが本来の、目に見えないほどの高速回転には至らなかった。

「ほほほ、大したおもちゃだこと」
見た目も音も錆び付いたチェーンソーのようになった回転刃が二つ、ホウオウレンジャーの間近で唸りを上げる。
敵に奪われ、凶悪な外見と化してしまった自分の武器を前に思わず歯が震えてしまいそうになるが、ここで相手のペースに呑まれてはいけないと自分に言い聞かせる。刃も回転機構もあそこまで壊れた大輪剣は、それこそ見た目だけのおもちゃ、金属の塊に過ぎない。そして自分の武器は大輪剣だけではない。敵が勝ち誇っている隙に……
と、そこまで考えた時、敵の手に渡った剣が大きく振り上げられた。
(来る……!)
身構えるリンが全く予想していなかったことに、首を締め付ける髪の方を大きく揺さぶられ、さらに上空へ持ち上げられてしまう。反射的に手足をばたつかせた無防備な腹部へ、「金属の塊」が激しく喰い込んだ。
「がはぁあっ!」
刃の状態も何も関係なく、円盤状の金属をみぞおちに叩きつけられた。そして次の瞬間、もう一つの円盤が柔らかい脇腹へ突き刺さった。激しい衝撃に身体全体が折れ曲がってしまいそうになる。回転する刃がスーツに押し当てられて火花を散らすが、打撃のダメージだけでもホウオウレンジャーを痛みにのたうち回らせるには十分だった。
「ほっほっほ……」
回転ノコギリの斬撃がホウオウレンジャーを二度、三度と襲う。首を巻き付かれ、目で追うこともできない攻撃が、腹や胸など身体の柔らかい部分ばかりを狙って繰り返された。
「あっ! あぁっ!」
苦痛と、自分の武器で敵から痛めつけられるという屈辱にホウオウレンジャーはマスクの中で顔を歪める。この状況では武器を奪い返すこともできない。

だがまだ反撃の可能性はあった。ダイレンジャーが個人装備として両腰に下げているスターソードとスターカッター、それらは斬れ味では大輪剣に劣るが、両者を合体させることでダイバスターとして気力の弾丸を打ち出すことができる。イヤリング官女はその存在を忘れているかのようだった。

次へ
2014-04-13

羽毛(5)

敵の注意をなんとか逸らして、ダイバスターで逆転の一撃を食らわせてやりたい。だが、あまりに容赦のない攻撃の連続に反撃の機会が見つからない。
大輪剣による打撃から骨や内臓を庇おうと手を首から離せば、相手はそれを狙ったように髪の締め付けを強めてくる。辛うじて、右手で首と髪の間に隙間を作り、左手で肋骨の辺りを覆って、反撃ができなくなるような致命傷だけは免れている。
ただ一方的に殴られるだけの数分間の後、それに飽きたのかイヤリング官女が攻撃を止めた。

「うっ、うぅ……」
身体は痛むがまだ負けてはいない。しかし今は体力の回復を優先して、もう動けないふりをして髪で首から下を吊られたままにしておいた。
「ふっ!」
ホウオウレンジャーの首を掴んでいた髪が動き、華奢な身体を地面へ投げ付ける。砂に覆われた地面にめり込むようにして肩から叩き付けられた後、打撲の場所を押さえて苦しげに仰け反り、身体を丸めた。
「うぁっ、あ……!」
実際のダメージよりもかなり誇張した呻き声をあげ、敵の油断を待つホウオウレンジャー。反撃してくる様子のない相手を見たイヤリング官女は、髪に残っていた二つの大輪剣を背後へ放り投げ、回転を次第に停止した円盤がわずかに地表の砂を巻き上げた。
「だ、大輪剣を……」
倒れたままのホウオウレンジャーはわざと哀れっぽい声を出し、ガラクタと化してしまった自分の武器の落ちた方へ手を伸ばす。
「返して……! も、もうそれしか武器が……」
「おやおや、さっきのが相当に効いたようね」
不自然さを悟られているのではないか、もうこれ以上時間を稼ぐことはできないとホウオウレンジャーは判断し、倒れた状態から一気に片膝立ちの姿勢へ身を起こした。
「よくもやってくれたわね!」
これまで何度となく繰り返してきた動きで腰のホルスターからスターソードとスターカッターを瞬時に引き抜く。そして、それぞれをダイバスターの銃身と台座に変形……
そこでホウオウレンジャーの動きは止まった。それらの武器にもイヤリング官女の毛髪がぐるぐると絡み付き、どう見ても変形パーツを作動させることはできなくなっていた。
「あ……あぁっ……!」
長さからして、大輪剣で切り裂かれて落ちた髪が、活動を停止する前に置き土産のように装備の中へ忍び込んでいたようだった。
「ほほ、下手なお芝居だったわ」
逆転の機会をあっけなく奪われ呆然とするホウオウレンジャーの様子に、イヤリング官女が愉快そうに笑い声を上げる。
「でも自分で言っていた通りね、お前にはもう武器はない」
「っう……!」
ゆっくりと歩み寄ってくるイヤリング官女の口内に光る一つ目に見据えられ、恐怖で立つこともできないホウオウレンジャーは尻餅を着いたまま後ずさった。

空気を切り裂く音とともに、イヤリング官女の伸ばした綱のような髪束がホウオウレンジャーを捕らえた。
髪攻撃が来ることが分かっていながら避けられなかった。首を狙われたのではなく、今度は腋の下に、胴体を締め付けるように太い髪の束が巻き付いていた。
首を締められていなければまだ抵抗の余地がある、と考えたのは甘かった。そのまま徐々に肋骨全体を髪で絞られると肺が潰され、呼吸ができない。叫び声と共に息を吐き出すことはできても、吸うことができない。
「っは、あ……ぁ……っ!」
胸のふくらみを押し潰すように黒い髪がきつく食い込んでいる。手でそれを掴むと柔らかな感触をグローブ越しに掌に感じるのに、胴体をギッチリと拘束されている。
締め付けが一瞬緩むが、遠くなりかける意識を呼び戻し、マスクの中ではぁはぁと荒い息をするのがやっとで、両手に一応の剣を握っていながら何の抵抗もできない。
腋の下に感じる太い髪束の感触は、首筋で感じたのとはまた違う、巻き付いた場所をヌルヌルと這うような感触だった。髪束の表面が軟体動物か蛇の腹のように動いているため、ただ縛られているだけでもその場所を舐め回されているような感じを受けてしまう。気持ち悪い、と嫌悪感を感じるが、今はそれどころではなかった。
「あぁああぁっ!!」
ギュウゥウッ、と音を立てて髪が再度引き絞られると、まだ酸欠状態から回復しきっていない肺臓の中の空気を強制的に絞り出される。
(い、息が…… 息が……っ!)
両手に握っているスターソードやスターカッターを振るう余裕もなく、ただこの締め付けを1ミリでも緩めたい、という焦燥感で髪と自分の胸の間に手の指をこじ入れ、引き剥がそうとする。だが髪の拘束はびくともしない。苦しさで意識が薄れ、両手から剣がこぼれたことにも気付けない。
息が吸えない。酸素が欲しい。正座の後に足の痺れが切れた時のように全身がびりびりと痺れて、手足をじたばたと動かすたびに四肢が更に重くなる。目の前が暗くなり、視聴覚の麻痺した中で自分の心臓の音だけが響いている。

意識が途切れる寸前にまた一時、締め付けが緩んで、瀕死の命を繋ぐように呼吸を許された。必死で息継ぎを繰り返しながら、このようなピンチの時にいつも駆け付けてきてくれた仲間が全く現れないことに焦りと恐怖を感じていた。
(み、みんな……! 早く来て……!私一人じゃこいつに勝てない……!)
怪人の姉は「ここなら邪魔は入らない」というようなことを言っていた。この荒地では恐らく仲間と連絡を取ることができない。このままではイヤリング官女のなすがままに絞め殺されてしまう。
「ほっほっほ……! どう、痛い? 苦しい?」
「こ、こんなも……ぉおごぉおおっ!」
言い返そうとした瞬間にまた締め付けが始まり、背骨を折り曲げられながら窒息に悶える。まるで溺れているようにして足で空中を蹴り、胸を締め付ける黒髪の束をどんどんと殴りつける。空中に居ながらにして、水責めと同じ性質の拷問を受けていた。
(苦しい……! 誰か……だれか……!)

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2014-04-15

羽毛(6)

怪人の攻撃を防御しきれない、という段階はとうに過ぎ、事態は「防戦一方の戦い」から「一方的な拷問」に変わっていた。この数分の間だけでも、イヤリング官女はホウオウレンジャーを締め殺す機会が何度でもあった。だがそれをすべて窒息死の直前で止め、瀕死の苦痛と恐怖を繰り返し体験させている。捕虜の顔を何度も水に浸けるように。
ダイレンジャーが過去に戦った女怪人に口紅歌姫がいた。ダイレンロッドの先で顔に傷を負った口紅歌姫はその報復として、ホウオウレンジャーを殺人音波で嬲り殺そうとした。女の美しさの象徴として自慢にしているであろう髪を切られたイヤリング官女が同じ行動に出てもおかしくはない。しかし怒りに任せた口紅歌姫の襲撃とは違って、この怪人は余りに楽しげに拷問の執行を続けていた。
「どうして…… どうしてこんな事を……!?」
気を失いかけ、首をぐったりと後ろに傾けながら、敵に問いかけるというより譫言のように思考がそのまま口をついて出てしまった。
「ほほ……」
イヤリング官女は締め付けを一時緩め、ただし相手の手が使えないよう両肩から腕にかけて髪の巻き付けを追加して、直立不動の姿勢をホウオウレンジャーに取らせて言い聞かせた。
「それが阿古丸様のお望み、とだけ教えてあげるわ」
「阿古丸……」
阿古丸がコウをゴーマに引き入れようとしていることや、そのコウがキバレンジャーの正体であるという秘密をホウオウレンジャー・リンはまだ知らない。阿古丸がリンに向ける特別な悪意や、この執拗な拷問の理由はどうしても不可解なままだ。
「こ、答えなさい! 私一人にこんなことをしても、阿古丸には何の得もないはずよ! 一体何が目的なの!?」
「目的など、わらわもお前も知る必要のないこと…… ただ、お前が苦しめば苦しむほど、阿古丸様はお喜びになるはず」
怪人ゆえの忠誠心からそう答えるイヤリング官女の言葉にホウオウレンジャーは、話の通じない相手に囚われていることを改めて痛感した。

これ以上話すことはないとばかりに、イヤリング官女は拷問の次の段階に入ろうとする。腋の下を取り巻いていた綱のような髪束がばらけて広がり、胴体の締め付けが緩くなった。しかし先ほど両脇を閉じるように腕を縛られており、脱出を試みようとしても身体を芋虫のようにくねらせることしかできない。解けた髪は帯状に広がって、巻き付きの面積を拡大しながらシュルシュルとホウオウレンジャーの上半身に絡みついてきた。
「まっ、は……っ、ちょっと、待ちなさい……!」
薄いスーツの上をモゾモゾと撫でながら移動する、気味の悪い感触が胸や背中、首元を這い回り、思わず背筋のぞくりとするような妖しい感覚を覚えてしまう。
だが今はそれどころではない。視界いっぱいに黒い髪が流れるように踊り、身体の周りに漆黒の繭が形成されるように髪を巻き付けられていく。逃げられないだけではない、身動き一つできないようにさせられていることに気付くが、もがけばもがくほど髪が絡まり、身体から自由が奪われていく。
「あ……あぁぅっ! ふっ!」
きつい繭の中で身体を転がされながら、手には何重にも髪が絡み付き、数秒後には完全に上半身を拘束された状態にされてしまっていた。両腕を伸ばしたまま腰の後ろへ揃えて、二の腕から指先までを髪でまとめて引き絞られている。両の肩甲骨がくっ付きそうなほどに不自然に胸を張って前へ突き出し、胸郭を膨らませることができないため浅く速い呼吸を繰り返す。
(く、苦……しい……! 胸が…… 潰れ……っ!)
黒い髪は上半身全体をほとんど覆うように巻き付き、隙間からピンクや白のスーツが覗いている。その下から垂れ下がったピンク色の脚とブーツが溺れる人間のようにめちゃくちゃに動いていたが、呼吸のできないホウオウレンジャーのマスクの中からは、激しい叫びではなく、喘ぐような声しか響いてこなかった。

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