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2014-05-03

羽毛(9)

しかし、次に感じたのはあの痛みや熱ではなかった。逆に背中のあたりがすっと寒くなるような感覚が一瞬して、固くこわばらせていた肩や背筋から力が抜けていく。締め付けが緩んだのか、と思ったのも束の間、肩の力が抜けるどころか、腕や首、手足にまで力が入らなくなっていることに気付く。
「あっ、あぁっ!?」
さっきまでの蓄積されたダメージがすべて疲労となって襲ってきたように、ただ縛られているだけの身体がだるく、重い。
「こ、今度は……何を……?」
イヤリング官女の方を睨みつけると、その原因がすぐに見て取れた。妖力を流し込まれた時には赤黒い光が走っていた長い髪の束が、ピンク色の柔らかな光を纏ってざわめいていた。
「ほほほ、これはなかなか……」
イヤリング官女が両手の指をひらひらと動かすと、髪の発光がゆっくりと強弱を繰り返す。そしてそのたびに、身体から力が奪われて行くのがはっきりと感じ取れる。
「そ、それは……!」
「お前の気力、戴くわ!」
髪の巻き締めがギュウゥッと強くなると身体が勝手にびくんと引きつり、まさに絞り上げられるように全身から気力が吸われていく。
「う、うあぁああぁぁ!」
力が抜ける、という表現では済まなかった。身体の芯から直接、気力を吸い取られている。ただ闘うための力だけではない、生命のエネルギー全てを髪に抜き取られていく。
「ふあぁ! あ……あはああぁあっつ!」
いつも気力を生み出すときに想像するのは、胸の奥や下腹部といった場所で熱い気力が湧き、身体に広がっていくイメージだった。そうした温かく柔らかいエネルギーとして気力は全身に行き渡っているはずだった。しかし今ホウオウレンジャーが感じているのは、脊髄の中身を上下からじゅるじゅると吸い出されていく苦痛、脱力感だった。
「はっ! あぁっ! いやああぁ!」
ピンクと白の身体を締め付ける黒い繭が一定のリズムで収縮を繰り返す。そのたびに、体液を絞り出されるようにしてピンク色の光が繭から溢れ、イヤリング官女の方へと流れていく。
今まで一度も経験したことのない、身体の力を吸い出される感覚。攻撃に対抗するための力そのものを徐々に奪われ、一体どうすればこの苦痛に耐えられるのかも分からない。四肢の先が痺れ出し、身体が冷たくなっていく。

完全に力の入らなくなった身体がグニャリと折れ曲がったように感じ、その次には衝撃とともに身体の前面が硬く巨大なものに叩き付けられた。
ホウオウレンジャーはうつ伏せで砂地へ転がっていた。髪の巻き付きを解かれたのだった。
「あ……っ、あぅ……」
だが全く動くことができない。気力のほとんどを吸い出された身体は自分のものではないかのように重く、感覚も鈍っていた。
髪から解放されたにも関わらず、呼吸の苦しさまでもがまだ続いている。緊縛さえ解ければ、とあれほど思っていたのに、これでは反撃などできそうにない。
「おっほっほ…… 解いてあげたわ」
近づいて来ようとするイヤリング官女の様子に身体が本能的な恐怖に震えるが、地面に転がったまま身体をやや丸めるといった動きしかできなかった。
(に……逃げなきゃ……! 反撃は無理でも、ここから……!)
必死で呼吸を整え、奪われた分の気力をまた作り出して身体に行き渡らせようとする。
しかし、それもその一時だけのことだった。胸と地面の間にあの柔らかな太綱が音もなく差し込まれ、一気に空中へと身体を差し上げられた。
「あぁっ!?」
(そ、そんな…… 髪の毛の攻撃は終わったんじゃないの?)
灰色の地面にうつ伏せていた視界が上昇し、地上数メートルの高さに吊り上げられる。見下ろしたその場所にいるイヤリング官女が、ホウオウレンジャーを指差した。
「もう一度」
「ひぃっ……!」
助けて、と恐怖のあまり出かかった声を抑えようとして、しかしその直後には恐怖や勇気など関係なく、あの電撃の苦痛が身体に襲い掛かってきた。
「がぁああぁああっ!」
胸を取り巻いた髪束から妖力の電撃が染み込んできた。肋骨を締め付けられながら、乳房を含めた胸や脇腹が高熱の帯で焼かれ、火花と爆発に包まれる。緩めることなどできない。逆に髪をさらに伸ばされ、緊縛の繭を再形成されていく。
両手、両足と順に自由を奪われながら、ホウオウレンジャーは再び黒髪地獄へと引きずり込まれていった。

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2014-05-04

羽毛(10)

三人官女の次女、ネックレス官女が荒野へ戻ってきた時にも地獄の責めは続いていた。
ちょうど何度目かの気力吸収が始まろうとするところだった。ホウオウレンジャーのマスクと、ブーツの足首から先だけが上下の両端に露出した細長い繭が、より細く引き絞られ始めた。
「っは、ぐぁあ……っ!」
スーツの防御力の限界を超えた力で、少女の華奢な身体が押しつぶされていく。ゴキン、ゴキンと鈍い音が頭に響いている。肩や肘の関節は外れたかも知れなかった。
「あ、ぁ……あぁあぁ〜っ!! 」

「流石はホウオウレンジャー、いい声で鳴くわ」
姉の声に気付いたイヤリング官女は気力吸収の手を一時止め、得意気な調子で答えた。
「ええ、武器を奪ってさんざん斬り付けた後は、黒髪地獄で締め上げて妖力を流し込んだり気力を吸い取ったり…… 最高の苦痛を味わわせてやっておりますわ」
「あら、それだけ?」
妹の説明を聞いたネックレス官女はどこか不満そうな様子だった。
「それだけではいけなくて? 阿古丸様は徹底的に痛めつけろとおっしゃったはず」
「阿古丸様はまだお若い。このような女を懲らしめるには、痛みだけでは駄目という事をご存知ない……」
一時的にだが髪の締め付けや各種の攻撃が止み、苦痛の連続から逃れたホウオウレンジャーは黒髪の中でぐったりとうなだれたまま荒い息をついている。姉妹の会話に耳を傾ける余裕もなく、ネックレス官女が何を企んでいるか知る由もなかった。

「お放し」
ネックレス官女の言葉と共に、解けた黒髪の隙間からホウオウレンジャーの身体が滑り落ち、地面へ転がった。
「うっ、う……」
縛り上げられていた上半身の痛みをこらえながら地面にうずくまる戦士の様子をネックレス官女は一瞥すると、何もない空中から掴み出すようにして、赤い球の連なった首飾りを手の中に出現させた。
ジャラ、という聞き慣れない音に気付いたホウオウレンジャーが顔を上げたとき、またしてもその体に太い触手のようなものが巻き付いた。
「うぅあぁっ!」
(ま……また髪が……!)
だが今度のそれは髪ではなかった。生温かさはそのままに、肌色の筋肉質の触手が両腕を封じるように巻きついている。そして不意にネックレス官女の声がホウオウレンジャーの耳元に囁きかけられた。
「ほほほ、痛いかえ?」
ネックレス官女が一瞬のうちに背後へ移動したのだと思った。だが、その声の方を見てホウオウレンジャーは目を疑った。ネックレス官女の首が、イヤリング官女の髪と同じように長く伸びて巻き付き、頭部が耳元へ囁くように話しかけていたのだった。
「ふ……二人して変わり映えのしない技ね……!」
新たな締め付けの苦痛を予感しながら、ホウオウレンジャーはそれでも精一杯強がってみせた。
「なるほど……」
ネックレス官女の首にやや力が込められ、足が地面に触れない程度にホウオウレンジャーを持ち上げて、身体ごと横を向かせた。
視線の先には、赤いネックレスを両手で捧げ持ったネックレス官女の身体があった。
「あ……っ、何、何を……?」
距離にしてほんの数メートルをゆっくりと、恐怖する時間を与えるかのように、ネックレス官女はホウオウレンジャーの身体をネックレスの方へと近づけていく。
首で縛られて手を動かすことができず、足を激しくばたつかせてこの儀式のようなものを逃れようとするが、今の体勢からネックレス官女を蹴り倒すことなどできなかった。

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