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2015-01-01

飼鳥(1)

第33話「アイドル初体験」より

夕暮れの近い海岸の砂浜で、ホウオウレンジャー・天風星リンはゴーマの女幹部、ガラ中佐の顔前に立っていた。

リンの背後には一塊りの機械の残骸が横たわっている。それは怪人、メディア魔術師の亡骸である。リンの温かさに触れ、人間の側に立つことを選んだメディア魔術師が、リンを庇ってガラに立ち向かった結果だった。
(ガラ、貴方だけは……絶対に許さない!)
リンの恋心を利用し、メディア魔術師を差し向け、そして最後にはその心変わりを戯言と切り捨ててかつての部下を殺したガラを許せるはずがなかった。

戦闘力では遥かに勝るはずのガラが、目の前に立つリンの気迫に完全に圧倒されていた。マスクの奥に隠された怒りと悲しみがガラにもはっきりと見て取れた。ゆっくりと拳を握り締め、振りかぶるリンを前に、手足が動かない。
「いやああぁっ!」
悲鳴とともにガラの頬を打ったリンは、転がるように倒れた敵を前にはぁはぁと息を弾ませた。一度は転身不能に陥るまで気力を奪われた身体である。立っているのがやっとの状態だが、これで終わらせる訳にはいかなかった。ゴーマの卑劣な策略に対して、たった一人でも決着を付けなければならない。

一歩前へ踏み出したリンの身体を、ぐいと抱きとめるものがあった。
(!?)
リンの上半身には、細い映画フィルム、ビデオテープなどが複雑に絡み付いていた。背後から伸びたそれらのテープは、いつに間にか砂浜に立ち上がっていたメディア魔術師の腕から発していた。
メディア魔術師が短く唸ると、テープが腕の装置の中へ巻き戻るように縮まり、リンの身体が怪人の方へ引き寄せられた。
「た、高村さん……?」
メディア魔術師の人間としての名を呼ぶリンに、怪人は苦しげな声で答えた。
「リン…… いや、ホウオウレンジャー……」
その台詞と、首にまできつく巻き付いた黒いテープに不吉なものを感じて、リンは背後の怪人と、ゆっくりと身を起こすガラの姿を交互に見た。
「すまない、俺は…… 偉大なるゴーマを裏切ることはできない……」
「……!」
人間の愛に一度は目覚めたはずの怪人の言葉に、リンは身体を強張らせた。メディア魔術師は、リンを助けるために蘇ったのではなかった。
「そうだ、それでいい……」
冷酷に笑って立ち上がるガラに見せ示すように、メディア魔術師はリンの首に片腕を回し、ゆっくりと締め付けていく。
「そ、そんな…… 高村さん……! やめて……!」
機械の身体の、ごつごつとして冷たい感触をスーツ越しに首筋に感じながら、リンは息苦しさに身を震わせ、やがて気を失った。

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2015-01-02

飼鳥(2)

はっと気付いたとき、リンはホウオウレンジャーに転身したまま、暗く殺風景な部屋の中央で数名のゴーマ族に囲まれていた。
両手を高く上げ、頑丈な二つの手錠に繋がれて、金属製の大きな枠組みの中に吊るされていた。足は床に付いてはいるが、肩幅よりもやや広いくらいに両脚を開かされ、床を這う金属棒に足首を繋がれ、ほとんど動かすことができない。
「っ……!」
捕まってしまった、という事実と、直前のメディア魔術師の言葉が自分の聞き間違いではなかったことが確かとなり、重苦しい絶望と共に全身の力が抜ける思いがした。

2体のコットポトロが、捕らえたホウオウレンジャーの前後に立ち、小型の金属探知機のような装置をスーツの表面に沿うように動かして機械の反応を確かめている。
「武器になるものは全て外せ」
ガラの命令にコットポトロ達が大きく頷く。はっと気付くと、腰の両脇に着けていた剣がすでに外され、消えていた。
しかし今はそのことよりも、目の前にいるガラにもう一撃を加えられないことの方がずっと悔しかった。渾身の力とはいえたった拳一発しか与えることができず、それだけで逆にこの拷問台のような場所に拘束されてしまった。
「高村さんは……どこに居るのよ!」
「フン…… 高村さん、か。心配しなくても、すぐに会わせてやるわ」
あの世で、と次の台詞が続くのではないかとホウオウレンジャーは拳を硬く握ったが、ガラの言葉は違った。
「お前はこれからゴーマの軍法裁判に掛けられるのよ。メディア魔術師もそこに出廷する」
裁判という意外な単語にホウオウレンジャーは戸惑った。だがその裁判はほとんど形だけのもので、結局は被告に死刑や極刑を下すための仕組みであることはおおよそ想像がついた。

「出廷の前に、武器や凶器の類は全て没収する。やれ」
ガラの合図と共に、しばらく捕虜のそばを離れていた2体のコットポトロがホウオウレンジャーの両脇に再び陣取った。そこから手を伸ばして、拘束された身体を全身満遍なく撫でさするようにゆっくりと掌で触り始めた。
「くっ……ぅっ……!」
スーツの内部に武器を隠していないかのボディチェックだということは分かった。しかし今手元にない武器はどれも、隠しているのではなく気力によって実体化されていないだけだ。無駄なことを、とも思うが、コットポトロ達の計4本の手は胸から脇腹、腰回りといった箇所を重点的に探り回し、武器の所在とは無関係に身体が反応し始めてしまう。
「ふ……っ!」
すべすべとした感触の薄いスーツの上を、まるで女の手のような細い指の群れが這い回ると、このような場面で発するはずのない声、吐息が唇をついて出る。
(スーツを着てるから……余計に……)
肌に直接張り付いたスーツの密着性と、この触診との組み合わせは厄介だった。武器を探り当てられる心配などないはずなのに、落ち着かなさげに身体を捻じり、頭上に固定された掌を開いたり閉じたりを繰り返して、全身が苦しげな表情を作ってしまう。
「な、何も隠してなんて……ないわよ……!」
何よりも、1対2というのがいけない。上半身と下半身、胸と背中、というように全身をランダムに探られ、どんなに意識を集中してもその裏をかくように弱い部分を探り当てられて声を出してしまう。じれったい刺激が常に身体のどこかに加えられ、つい我慢できずに身をくねらせ続けることになる。
(……っ、またそんな所……っ!)
多少敏感でも単独で触れられるだけなら何ともない箇所を、何点も同時に触られ、時間差で繰り返し刺激されて、弄られて……
「ん……! く、くぅ……っ!」
薄笑みの張り付いたような顔の、男とも女とも知れないコットポトロ達に全身を摩り上げられて、抵抗できずに身体を焦らされていくという屈辱。
「やめなさい…… やめ……っ!」
このような事態に耐えるための精神力が徐々に擦り切れ、声が上ずったものに変わっていく。

「ちょっ…… ちょっと!」
一方のコットポトロが、ただでさえ短いスカートの前面を大きく捲り上げ、スカートの二つの角をそれぞれ、洗濯挟みのような金具でスーツの腹部に留めてしまう。スカートの下はボディスーツであり、いつも蹴りやジャンプのたびに露わになるところだが、こうしてじろじろと観察される状況にあると、流石に恥ずかしさが頭をもたげてしまった。
そこに、足元へひざまずいたコットポトロが、まるで美容液かオイルでも塗るように、両の掌でホウオウレンジャーの片脚を包み込み、膝から大腿部へゆっくりとさすり上げる。
「くぅううぅ……っ!」
背筋を走った電気のような痛痒さに、ホウオウレンジャーはとてもじっとしていられず全身を反らせて震えた。
身体が敏感になっていた。手足の痙攣、身体の芯が疼くような感覚はすぐには止まらない。撫で上げられた部分よりも上、腰の中に、尿意にも似た切迫した感覚がこみ上げてくる。両手両足首の錠が、それを繋ぎ止める金属棒と擦れ合ってガチャガチャという音を立てた。

(こんな…… ま、まずい……!)
それまでは、触られるのをただ我慢してやっているのだ、と思っていた。だが、我慢できなくなったら。
いま手足を拘束されているのだという実感が今更ながら蘇ってきた。脅されて自分の意思で反撃を禁じているのではない。この触診で、我慢できないところまで、絶対に触れさせたくない身体の場所まで探られたとしても、それを止めさせる手段がないのである。いくら泣き叫んでも、ゴーマが手を緩める訳がない。
「いつもの武器をどこに隠した」
揉み消すことのできない疼きに悩ましく身をよじるホウオウレンジャーを愉快そうに眺めながら、それまで黙っていたガラが問いかけてくる。
「そ、そんなもの……」
だが考えてみれば、ガラも、恐らくは周囲に控えている戦闘員達も、ダイレンジャーが空中から武器を取り出すところを何度も見ているはずなのである。それを知った上で武器を差し出せと促しているのだ。これは、単なるボディチェックではなく尋問や拷問が始まったことを意味していた。

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2015-01-03

飼鳥(3)

言い返す言葉の見つからないホウオウレンジャーに構わず、コットポトロ達が動きを再開した。
「あぅっ……! あ……ッ!」
身体の両側から、先程までと同じように指先をしならせて、胸や太腿を中心にねっとりとした触診が始まる。一度性的絶頂に近い感覚を経験してしまった身体はあまりにも脆かった。手錠足錠をひっきりなしにガチガチと鳴らし、手足よりはまだ自由に動かすことのできる腰を前後左右に振りたてて、4本の手がもたらす感触を快感から遠ざけようと懸命の努力を繰り返す。だが、そんなことでこの戦闘員達のテクニックから逃れることはできなかった。
「ぅ……っ、く……!」
(か、身体が…… 感じさせられてる……!)
拷問の執行者達はまるでリンの感じる部分を全て知り抜いているかのようだった。指先で身体をなぞられているだけで、薬でも塗られているかのように全身が性感で染め上げられていく。身体の表面が次第に敏感になり、自分のスカートが脚に擦れるだけでぞくりとするような感覚が走るまでになっていた。

「どうした、ご自慢のダイレンロッド、それに大輪剣は……」
自分の武器の名を聞いて、ホウオウレンジャーははっと一瞬我に返った。このまま単に耐え続けてもどうにもならない、一時的にでも大輪剣を手に取ることができるなら、手錠を壊すことができるかも……
そう思って、必死で手首から先に意識と気力を集中させ、自分の武器のイメージを心に描いた。
一瞬の瞑想の後、かっと手を開く。
「大輪剣!」
手のひらの中に剣の柄が触れる感覚が伝わり、すかさずそれを握りしめる。
(やった……!)
赤い柄の周囲を円形の刃が取り巻いた、一対の武器が両手に出現した。美術品のようなデザインでもあるが、先に奪われた二本よりもずっと強力な切れ味の剣である。
少々手首を痛めたとしても、これを使って手錠の鎖を…… そう考えた瞬間、内腿に数本の指が添えられ、その指先がスーツの表面を擦りながら上方へ移動し、陰唇の柔らかい肉の裂け目、さらにその上端の小突起までを絶妙の力加減で緩やかになぞった。
「く……っ!」
下腹がきゅっと疼くような感覚から間をおかず、今度は胸の突起をぷつぷつと連続で弾くように指の列が両胸の先端を通過した。
「あっ……あぁぅ……ッ!」
背筋をよじるような切なさが身体に生じた。いま最も敏感になっている三つの部分を、コットポトロ達はここへきて露骨に弄り立ててきた。乳首も、陰核も、これまでの責めによって固くしこり、今のホウオウレンジャーのスーツでは外側からその存在を確認できるほどになってしまっていた。それぞれがクニクニと音を立てそうな調子で肉の突起を指の腹で転がされ、抓まれて、中に通った感覚神経に濃縮された快楽の信号が送られる。
「っあは……っ! ぅあぁあっ! は……ひぃいぃっ!」
ようやく戦う心を取り戻しかけていたホウオウレンジャーは、一瞬にして戦士から性調教の対象へと再び引きずり下ろされた。セックスの前戯のように身体を甘く乱暴に責められて、泣きそうな声を上げて切なさに悶えてしまう。絞り出すようにして両手に集めたはずの気力が、煙のように消えてなくなっていく。
(だ……駄目……! 耐えなきゃ……! 耐え……っ!)
すぐそこまで迫っていた脱出と反撃のチャンス。鉄の鎖など簡単に切断できる武器を手にしているというのに、手に全く力が入らない。お前の身体は戦うためのものではないと躾けをされているかのように、気力を振り絞ろうとするたび女の部分がグリグリと捏ね上げられて、快感と生理的欲求で思考や闘志が寸断されてしまう。
「ふううぅうぅっ! は……はぁっ! ダメ……! やめて……っ!」
無言で、ほとんど指先だけを動かしている2体のコットポトロとは対照的に、中央に挟まれたホウオウレンジャーは全身を波のようにくねらせ、立ったまま性行為を強いられているように身悶えていた。狭い拘束枠に繋がれた手足はその位置から動かすことができず、尻を突き出すように腰を振り立てる。脳が痺れて、自分の意思とは関係なく何度も背筋が反り返る。手にしたばかりの大輪剣のことも意識から消え、右手、左手と順番に掌を開いて武器を硬い床に落とした。

コットポトロ達が手を止めた途端に、ホウオウレンジャーは立つ力を失って、両の手錠に体重を預けてがっくりとぶら下がった。
落とした剣のことにもようやくそこで気付き、床に転がった最後の切り札を愕然としながら眺めていた。
「くく…… そうだ、次はダイレンロッドだ」
「……っ!」

それからホウオウレンジャーは再び、もう抜け出す手段のなくなった拘束架で拷問の続きを味わいながら、言われるがままに、自分のダイレンロッド、そしてそれを槍に変化させるためのアタッチメントを次々と床に落下させた。今現在の快楽の中で、武器を取ってもう一度反撃を試みることなど考えられなかった。もう何でもいい、早く終わりにして欲しい、この気の狂いそうな時間から解放されるなら自分の分の武器など差し出しても構わない、という一心だった。
ゴーマの責めはすでに、倒した獲物をじわじわと嬲り者にする段階へと進んでいた。両の胸を優しく揉み込まれ、陰唇の内側を指先で浅く掻き回されて、敏感になった素肌にスーツの裏地が擦れる感覚に絶えず煽り立てられながら、スーツに全身を愛撫される逃げ場のない快感に泣かされ続ける。
「まだあるはずよ。もう一度言う、武器を全て捨てろ」
「もう……ッ! もう無い! もうこの手を止めてぇっ!」
最も憎いはずの敵に許しを乞い、股間に暗い色の染みがついたスーツで腰を前後に振りたて、ホウオウレンジャーは快楽と恥辱の味を嫌というほど身体に教え込まれていた。どんな拷問でも耐えてみせると誓っていた数十分前の自分が同じ自分であるとは信じられなかった。
(き、気持ちいい……! 耐えられない…… 身体が破裂しそう……!)
乳房や子宮が欲求で熱く疼き、身体を内側から責め立ててくる。どんなに自分の使命や敵の卑劣さを思っても、スーツの上から揉まれ抓まれただけで身体をこんなにされてしまうという現実が否定できない。途切れなく延々と続く性の感覚は、どんな攻撃や苦痛よりもずっと効果的に戦士のプライドを突き崩していった。
「はぁあ……っ! はひ……っ! ゆる……し……!」
武装解除の命令には従ったというのに、4本の手はなおも敏感な個所を執拗に弄り回し続ける。一体どうしたら解放して貰えるのか。このままでは狂ってしまう。狂って死ぬまでこの手から逃れられない。
(ゆび……! 指がぁっ……! もう掻き回すの止めてぇ……っ!)
スーツで遮断することのできない指の往復運動が、短いスカートで隠された粘膜の谷に徐々に深く沈み込み始める。クチュクチュと音を立てて、内側から溢れ出した液体を掻き出すように指を曲げ伸ばししながら、柔らかな肉の襞をピンクの被膜越しに擦り立てる。
「もう……もうやめて……! ぅぁ……っ、そんな所っ! ……あ、あぁあ〜〜ッ!」
コットポトロの指技に悶え続けるピンク色の女戦士に、ガラがむしろ助け舟を出すように告げる。
「持っているでしょう、天宝来来の玉よ」
「は……! だ、出す……出すから……!」
敵に言われて初めて、これまで気伝獣を呼ぶために数える程しか使ってこなかった玉の存在を思い出し、透き通るピンク色の宝珠を右手の指から床へこぼす。そこでようやく、コットポトロ達はホウオウレンジャーを拷問から解放した。

「時間がかかったな」
ちょうど足下へ転がってきた宝珠を拾い上げ、小箱の中に納めると、ガラは徐々に思考力を取り戻し始めたホウオウレンジャーに言った。
「はぁ…… はぁ……っ……! も、もうこれでいいわね…… 早く裁判を……」
天宝来来の玉になぜ気付かなかったのだろう、と、今度こそ武器を完全に失ったホウオウレンジャーはそんなことを考えていた。その方が苦しむ時間が短かかった、というのではない。大輪剣ではなく先に玉の力を使っていれば、あるいは縛られてすぐに取り出すことができていれば……
「まだよ。お前は信用できない」
相手の返答にホウオウレンジャーは耳を疑った。
「私に聞かれるまで玉のことを黙っていた。まだ隠しているはずだ」
ガラは意地悪く笑ってから、傍らのコットポトロに向き直る。
「穴という穴を調べろ」
「な……っ!」

口をきくこともできないホウオウレンジャーを尻目に、そのコットポトロは部屋の隅に向かい、台上に並べられた金属器具の一つを取り上げる。
「なに……何を……!?」
そして、その用途を知らない者にもどこか不穏な印象を与える大型の開膣器をカチャカチャと弄びながらこちらへ戻ってきた。
大きな金属のヘラを開閉するその器具と、もう1体のコットポトロが持って現れた、男性器の形をした黒い張り型を見てホウオウレンジャーは恐怖に震え上がった。
「ガラ……! わ、私をどこまで……!」

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2015-01-03

飼鳥(4)

そのとき、荒々しい足音と共に聞き覚えのある声が近付いて、駆け寄ってきたメディア魔術師がコットポトロの肩を掴んで引き倒した。
「やめろ!」
床に落ちた開膣器が激しい音を立てて壊れ、張り型を持ったコットポトロもその場から一歩退いた。
「裁判の前に拷問を加えることは禁止のはずです!」
詰め寄ってくるメディア魔術師をガラは複雑な表情で見返し、数秒間の無言を続けたが、やがて諦めたように部屋の出口に向かって歩き出した。
「フン、そんな規則もあったな……」
ガラが部屋から出ていくのを見届けると、メディア魔術師は拘束架に繋がった手錠の鍵を外し、腰が抜けたように崩れ落ちるホウオウレンジャーを抱きかかえた。
「高村さん……」
「その名前はやめろ」
返ってきた答えは素っ気なかったが、この人はまだ、心がゴーマに戻っても私への好意を失ってはいない、と、ホウオウレンジャー・リンは確信した。

拷問からは助け出されたものの、依然として敵地に捕えられていることには変わりがない。ホウオウレンジャーに許されたのは床に座って身を休めることと、洗面器一杯の水で身体の汚れた部分を洗うことだけだった。床に置いた洗面器の上に腰掛けるようにし、短いスカートで懸命に洗面器の中を隠して、愛液でぬるついた股の間を手洗いする。その周囲にはメディア魔術師だけでなく複数のコットポトロが監視に立ち、見下ろしていた。
「すまないが、君は捕虜の立場なんだ」
メディア魔術師は、ここがゴーマ宮の一室であること、この後間もなく軍法裁判が控えていることを手短に説明した。
「で、でも……」
二人掛かりでここを脱出すれば、と言いたかったが、一度ゴーマを裏切りかけたメディア魔術師に対しても何らかの監視体制が取られていることは間違いなく、この場でそれを口にすることは危険だった。
「裁判はもうすぐだ、時間がない」
「でも、裁判なんて言っても、きっと……!」
ゴーマが敵のダイレンジャーに下す判決は死刑しかあり得ない、とホウオウレンジャーはメディア魔術師に訴えかけた。
「落ち着け、静かにしろ」
そう言ってメディア魔術師は床に座り込んだホウオウレンジャーの肩にそっと手を置き、耳元に口を寄せて小声で囁きかける。
「俺に考えがある。必ず君を助ける」

1体のコットポトロがその場を離れ、様々な拷問器具が並んだあの壁際の机から二つ三つの道具を取って戻ってきた。
思わず、腰を下ろしたまま後ずさりするホウオウレンジャーだったが、コットポトロからそれらを受け取ったメディア魔術師が重そうなごつい手錠を床に捨て、細い鎖や紐だけを残したのを見て少しだけ平静を取り戻した。
「無拘束で歩かせるのは、流石にまずいんだ」
(拘束……)
裁判までに逃げ出すことはできそうにないと落胆しつつ、ホウオウレンジャーは促されておずおずと立ち上がった。
「手を組んで」
どうすればよいか分からず手首を腰の前に揃えるホウオウレンジャーを、メディア魔術師が叱りつけるように咎める。
「後ろだ」
「は、はい……っ!」
つい先ほど拷問による完全な敗北を経験したばかりのホウオウレンジャーは、反射的に恐怖の感情を呼び起こされ、命令に従ってしまう。
両手を背中側に回し、腰の後ろで両手首を重ねて、そこに軽い鎖を巻き付けられた。それほど拘束感のない処置にほっと息を付くが、次に、首を上げてそのまま動かさないようにと言われ、緊張しながら相手の動きを待った。
「ん……っ!」
首筋に何か柔らかい帯状のものが巻かれたのを感じ、思わず目を閉じるが、首がそれ以上締め付けられることはなく、ただ喉元でカチリという金属音がして、首輪を着けたのだということが分かった。
肩から上の緊張を解き、目を開けると、自分の首元から細いロープが伸び、それをメディア魔術師が掴んでいるのが見えた。
(これって……)
「行くぞ」
ロープが強く引かれ、首輪に引っ張られるようにしてホウオウレンジャーは歩き出した。

部屋を出て行く際に、自分の頭から腰下までがちょうど映る大きな壁面鏡の前を通り過ぎ、ホウオウレンジャーは鏡に映る自分の姿を見た。マスクやスーツはいつもの磨きたてたような光沢を失っておらず、上半身には目立った汚れや傷の一つもないのに、首輪を嵌められ、紐で繋がれているというだけで、その姿は囚われの身であることが強調され、捕虜よりむしろ奴隷のように見えた。
それは、首輪と紐が本格的な拘束具ではなく、ペットの犬に着けるような安っぽいプラスチック製品だったことが余計にそう見せたのかもしれない。
(犬の……散歩みたいに……)
首輪に繋がったリード紐が連想させるものの正体に思い当たり、ホウオウレンジャーは強烈な屈辱感と、何故かそれだけではない、訳のわからない感情で身体がかっと熱くなるのを感じた。
「あ……、ぁ……っ!」
マスクの中で息を弾ませながら、ホウオウレンジャーは両脇をぎゅっと締め、内股で、歩幅を小さくして歩行を再開する。まるで裸と変わらない、身体にぴったりとした派手な色のスーツに犬の首輪を巻かれ、今ではSMプレイを思わせる格好になった戦闘コスチュームで広い廊下へと歩き出していく。
こんな姿でゴーマの本拠地内を引き回され、法廷に立たされ、恐らくはガラを含めたゴーマの構成員達の視線を浴びるかと思うと、呼吸が荒くなり、口の中が乾いたようになってくる。先程のあの尋問、数十分にも渡って性感マッサージに悶え、恥ずかしい液まで漏らしてガラの前で演じた痴態が思い返されて、スーツを揉み立てるコットポトロ達の手の感触までが蘇ってくる。

「苦しくないか?」
リード紐を握って二、三歩前を歩くメディア魔術師が後ろを振り返って心配そうに尋ねる。
「苦しくは、ない、けど……」
首輪のことだけではない。もう一つ耐え難いのは、さっきまで拷問官の役目を務めていた2体のコットポトロが今もぴったりと両側に付き従い、常に監視を続けていることである。縛られ、身体を触られていた時には、手錠が解けたら絶対に殺してやるとまで思っていた相手が、何食わぬ顔で隣を歩いている。今も拘束度合いは弱いとはいえ抵抗を禁じられており、さっきのような愛撫をここで仕掛けられたらと想像すると、4本の幻の手が性感帯の周辺を這い回り、スーツの中で乳首が硬く尖り始めてしまう。
(か、身体が……まだ……)
これから殺されるかもしれないという時に、あの尋問の快感が頭から離れない。死の恐怖を打ち消すほどに乳房の芯や下半身がむずむずと疼き、あのとき何故あんな中途半端な状態で拷問が打ち切られたのか、一刻も早く拘束を解かれて身体を慰めたいと、そんな事ばかり思い浮かんでしまうのがまた恥ずかしかった。
マスクの下に恥辱の涙を浮かべながら、ホウオウレンジャーは法廷までの長い距離をよろよろと歩いた。

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2015-01-11

飼鳥(5)

見るからに分厚い、緑青の錆が浮き出た門扉の前に一行は到着した。
両脚の間のむず痒いような感覚を持て余すホウオウレンジャーは、メディア魔術師の手で首輪からロープを外されながら、手首の拘束を解いてくれるよう懇願した。
「て……手を……!」
「待ってくれ」
手首が解かれると同時にコットポトロが両側から腕を掴み、逃亡を防ぐように身体の脇へ密着してきた。せめてもと直立の姿勢からわずかに手をずらして、スカート越しの下腹部をマッサージするように指先で揉んで身体の違和感をこらえる。

「さあ、俺も別の被告席に行かなければいけない」
「え…… あなたも……!?」
メディア魔術師の方へ向き直ろうとしたのを両脇から強く引き止められるホウオウレンジャーに、メディア魔術師は硬い機械の手を伸ばして、マスクの頬にそっと触れる。
「判決の後、また会おう」
戦闘員達の手前、これ以上の言葉は掛けられないといった素振りを見せて、メディア魔術師は踵を返してその場を去ろうとする。
「た、高村さん……!」
かつての恋人とゴーマ宮で再開してから、防具越しにしか触れ合うことができなかったことに気付き、ホウオウレンジャーはコットポトロ達を振りほどき、転身を解いて縋りつきたい、と衝動的に思ったが、今の力ではそれは叶わず、やがて開いた門の先の部屋へ引きずられるように連れ込まれた。

廊下よりも一段と薄暗いその室内には、さらに数名の戦闘員が待ち構えていた。両脇を拘束していた二体がホウオウレンジャーの背中を突き飛ばすように押し、前へ転びそうになったところにスーツの胸元を掴まれ、強引に床に引き倒された。
「あ……あっ!」
倒れるときに片腕を捩じり上げられそうになったため、不自然な体勢で身体の側面から床に落ちる。すかさず、がら空きになった腹部を爪先で抉るように蹴り込まれた。
「ぐぅっ!」
思わず身体を海老のように丸めるが、その直後にさらに勢いをつけて背中を蹴られ、冷たく磨かれた石の床へ上半身を擦り付けてしまう。そしてまた、腰を、首を、好き放題に蹴られ、上から踏まれて、サッカーボールのように転がされた。
「うっ! うぅ…… やめ……ッ!」
決定的なダメージはないが、5対1か、6対1かの相手に集団で掛かられて反撃ができない。薄く軽い合金製のマスクが上から踏みつけられ、石造りの床を何度も叩いて乾いた音を立てる。相手が何人いるのかさえ分からない。雑魚の戦闘員とはいえ、気力を吸い取られて回復しきっていない身体には絶望的な状況だった。

身体の力が抜け、ぐったりとなったところで、両手を取られてうつ伏せにされ、二人がかりで頭の方向へ引き摺られる。何かまた門が開くような音がし、恐る恐る顔を上げると、車輪付きの台に乗せられた小さな檻が目に入った。
「!?」
檻というよりも、銀色の金属柵を砲弾型に組み上げたそれは、まさに鳥籠の形をしていた。同じく柵でできた側面の扉が開いている。
(あ、あの中に……私を……!?)
今から始まるのはあくまでも裁判だったはず、とホウオウレンジャーは愕然とした。まるで拷問器具、良くて禁固刑のための装置のような狭い檻の中へ閉じ込められることに本能的な恐怖を感じて、掴まれている両手を引き離そうとするが、もう遅かった。
「はっ、離せ!離して!」
両足をまたそれぞれ掴まれ、持ち上げられ、あっと思った時にはその檻の中に頭から放り込まれていた。
「……っ!」
小さな鳥籠だった。立つことも、手足を伸ばすこともできないようなサイズの丸い籠に閉じ込められ、背後で、というよりも尻の後ろで扉が閉まる音がした。
窮屈な空間の中で慌てて後ろを振り向こうとして、手首と足首がまた拘束されていることに気付く。隙間から手足が出せるほどの間隔で並んでいる垂直の鉄柵に四肢をそれぞれ手錠で縛り付けられていた。手錠は柵には完全に固定されておらず、柵に通された鉄環を上下に動かすことはできるが、身体を完全に起こすほどの高さはなく、結果、檻の中で床にひざまずくような姿勢になった。
(閉じ込められた…… これじゃ、また……!)
身体の自由を奪われることの恐ろしさ、屈辱をこの日いやというほど学んだホウオウレンジャーは絶望のあまり目の前が暗くなりそうだったが、メディア魔術師の、必ず助けるという言葉を思い出し、それに望みをかけた。

周囲に居る戦闘員達は檻の中までは手出しをして来ず、しばらくして、鳥籠を乗せた台が重い音を立ててゆっくりと部屋の奥へ向かって進み出した。

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2015-01-12

飼鳥(6)

奥の扉は裁判所に通じていた。厚い扉が音を完全に遮っていたらしく、扉が両側に開くと、さっきまでの暗い小部屋が裁判所の隣室だったとは思えないほどの喧騒が漏れてきた。

競技場かコンサートホールのように、広い部屋の周囲に沿って2階、3階の高さまで階段状の観客席が広がり、数百名と思われる人間が着席していた。狭い鳥籠の中からざっと見回した限り、怪人や戦闘員のような人物はおらず、ほとんどが中国の伝統衣装に似た服装をしていた。
(これがゴーマ宮の……)
鳥籠の中に囚われた、遠くからでも目を引くピンク色の戦士が部屋の中央に引き出されてくると、途端に客席がざわつき、その中に怒号や愉快そうな笑い声が混じっているのも聞こえた。
直接に罵声を浴びせる者や、物が投げられてくるようなことはなかったが、ホウオウレンジャーはこれから加えられるかもしれない侮辱に備えて固唾を飲んだ。

木槌で机を叩く音と、静粛にという声が響き、正面の高い席に3名の裁判官が座っていることに初めて気付いた。
「これより特別裁判を開廷する」
特別、という言葉にホウオウレンジャーは改めて身を緊張させる。別の被告席に居るというメディア魔術師の姿を探すが、それらしい席はここからは見当たらなかった。
「被告人、ホウオウレンジャー」
裁判官の言葉がそこで一度止まり、今のそれは自分に向けて呼びかけられたのだということに気付いてホウオウレンジャーは返事をした。
「はい」
落ち着いた、よく通る声が裁判所の空間に響く。声が恐怖に震えなかったことにホウオウレンジャーはまずは少し安心した。
少しだけ心に引っ掛かったのは、裁判官や観客に向かって檻の中でひざまずく姿勢を取らされていること、そして、リンという名前の少女ではなく転身した戦士の名で裁かれようとしていることだった。
(でも、その通りだわ)
ゴーマからすれば、憎しみや処罰感情があるのはダイレンジャーの一員としてのホウオウレンジャーに対してだろう。その本人としても、ここまで来れば最後まで戦士としての立場を貫くつもりだった。

「被告人は本年2月より、ダイレンジャーの一員として我々ゴーマに敵対し、ゴーマの闘士、および戦闘員を多数殺害し……」
裁判官がホウオウレンジャーの罪状を読み上げ始める。正直なところ、その内容には何一つ心を動かすようなものはなかった。
「……ものである。被告人はこれを認めるか」
「認めるわ、でもそれはゴーマの立場からの勝手な言い分よ!」
狭い鳥籠の中で精一杯に背筋を伸ばし、声を張って、ホウオウレンジャーは思うままの言葉を述べた。
「私達が倒してきたのはどれも、侵略のために送り込まれた怪人や……」
メディア魔術師の行動はただそれだけではなかったことをちらと思い出しつつ、滔々と論述を続ける。
最初静まり返っていた観客席が、鳥籠に詰め込まれた姿とは対照的なホウオウレンジャーの態度と発言を受けて、また騒々しくなり始めた。
「……だから後悔も、謝罪もしない。こんな裁判、始めから無意味だわ!」
必ず助けると言っていたメディア魔術師が何か弁護の方法を考えていたとしたら、その気持ちや計画に反することになるであろう主張だったが、もしそうだったとしても、ここでゴーマに媚びるような発言や、命乞いをする気は絶対になかった。
「うむ……」
壇上の裁判官達も、流石に思っていた以上の反論に気を飲まれているようだった。しばらくの間、3人の間での小声でのやりとりがあった末、左端の裁判官が正面に向き直って口を開いた。
「被告人は罪状を認め、またそれについて異議を申し立てなかったものと見なす」
続いて中央の、裁判長に当たると思われる人物が勿体ぶった態度で話し出した。
「被告人の犯罪、およびその後の態度は極めて悪質なものであり、死刑かそれに準ずる刑罰が相応しいものと考えられる。この量刑について意見を述べる者はいるか」
死刑という単語は十分に予想していたにもかかわらず、ゴーマの裁判官の口から実際にそれを聞いて、心臓が締め付けられるような感覚が襲った。そして、それに準ずる刑罰という言葉も、先程のガラによる尋問を思うとさらに悪い結末しか思い浮かばなかった。

もう後戻りはできない、覚悟を決めるしか、と震える手を懸命に止めようとするホウオウレンジャーの耳に、あの声が飛び込んできた。
「発言させて下さい」
メディア魔術師が、ホウオウレンジャーからすると斜め後方の出入口から進み出てきて、鎖を引きずるような音を立てて近くの卓の前に立った。
(高村さん……!)
本当に来てくれた、とホウオウレンジャーはマスクの下に涙を浮かべた。たとえこの弁護が失敗に終わったとしても、判決後にもう一度会って、最後に少しの間でも二人の時間を過ごすことができたら、とそこまで考えたところで、裁判官の声が響いた。
「メディア魔術師は次の裁判の被告となっているはずだが」
「今は参考人として出廷しました」
その口調は、先程のホウオウレンジャーの論述とはまた違った、切迫した様子を帯びていた。

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2015-01-12

飼鳥(7)

「裁判長、この女の犯罪はそれだけではありません」
この女、というメディア魔術師の口調に、ホウオウレンジャーは再び心臓に響く衝撃を受けた。今から弁護を始めるという雰囲気ではなく、むしろあの砂浜でゴーマへの忠誠に目覚めたときにそっくりだった。
(裁判、だから……?)
「この女は私の作戦中において、私がゴーマであることを知り、表面上は友人関係にあるという立場を利用して卑劣な罠を仕掛けてきました」
全く予想もしなかった言葉の一つ一つに、ホウオウレンジャーは檻の鉄柵を握る力を失い、ずるずると上半身を崩して床に手を付いてしまう。
「本来ならゴーマへの裏切りが死を意味する私を懐柔しようという意図をもって、このような行動に出ました」
いつの間にか空中に浮かんでいた巨大なスクリーンに、画質の悪い映像が投影される。アイドルとして特訓中のリンが、カメラマンでありプロデューサーである高村翔一郎に笑いかけるシーン、ささやかな贈り物をしたり、手を握ったりという場面。本来であれば今のリンにとっても懐かしい思い出のはずの場面が、だまし討ちのための罠として次々と紹介された。
(ど、どうして……! どういう事なの!?)編集された映像の最後は、リンが最後の収録の前に高村に言った台詞の場面で終わっていた。
『だって、高村さんが好きだから!』
「このように」
メディア魔術師は映写を止め、裁判官や観客に向かって言った。
「私の心がゴーマから離れるよう、徐々に嘘の言葉を重ねて……」
「ち……違う! 違う!」
ホウオウレンジャーは鳥籠の内側に必死に顔を押し付け、メディア魔術師に叫んだ。
「嘘じゃない! 私は貴方がゴーマだなんて知らなかったし……、それに……!」
本当に好きだった、と言おうとして、その気持ちに胸がつかえて、それ以上の言葉は出なかった。

「裁判長、ホウオウレンジャーの発言はそのまま信用はできません」
しばしの無言の後に、メディア魔術師が手元の映写機を操作しながら言った。一度陰になっていたスクリーンがまたうっすらと明るくなり、さっきとは異なる雰囲気の荒い映像を映し出した。
『……ぁっ……! ひぃあぁっ! やめて!』
暗い背景の中央でピンク色の身体をX字に開いて拘束されたホウオウレンジャーの姿は、今日のあの尋問のシーンから取られたものだった。
『はひぃっ! そんなっ! そんな所ばかり……っ!』
(え……えっ!)
檻の中からもよく見える位置にあるスクリーンの一つを見つめながら、ホウオウレンジャーはあの場面が映像に残されていたことに愕然とする。
性感帯をぬるぬると這い回る4本の手の愛撫に狂わされ、捕らえられた時に見せた毅然とした態度が徐々に崩されていく記録が、真正面からの視点で再生されていた。
『お願い! やめてぇっ! もう何も隠してない! 嘘じゃないのぉおっ!』
「この女は自分の身を守るためなら平気で嘘を繰り返します」
快楽拷問に悶えるホウオウレンジャーの映像を流しながら、メディア魔術師は続けた。
『ひぃっ! 玉は……天宝来来の玉は……! 忘れてただけなのっ! 許して! もう許して! はぁっ、あぁあ~っ!』
「これが、この女の本性です」
「やめて! 高村さん、どうして……! どうしてこんな事をするの!?」
檻に繋がれた手錠を狂ったように鳴らし、呼びかけるホウオウレンジャーを横目に、メディア魔術師は裁判官達に向かって提案する。
「この場で尋問を行う必要があります」

放して、助けてと懇願するホウオウレンジャーの横で、メディア魔術師は説明する。
「この鳥籠には高圧電流を流す装置を仕掛けてあります。お手元にスイッチがあるはずです」
高圧電流、と聞いて震えるホウオウレンジャーが覚悟を決める間もなく、縛られた手首と足首が弾けるような衝撃とともに目の前に火花が散った。
「あぁあっ!」
「このまま尋問を開始してください」
「ま……待って……! どうしてなの……!」
手首や床から上がる煙に紛れて見えない裁判官の席から質問が飛ぶ。
「今の参考人の供述に関して……」
「待って、高村さん、こんなのおかしい! あっ、あぁっっ!!」
また電撃に襲われ、鉄柵から手足を離すことができないホウオウレンジャーが狭い鳥籠の中でばたばたと跳ねながら悲鳴を上げる。
「このような行動を、他のゴーマの闘士に対しても行っていたのか」
「なっ、何を……! そんなっ! うぁあっ!!」
混乱した頭で、質問に対して考える時間さえ与えられずに電撃が繰り返される。それは尋問の目的だけではなく、観客の復讐心や嗜虐心を満足させる目的もあることは明らかだった。

何度目かの電撃と共に、とりわけ大きな火花が鳥籠の中で散り、それを境にホウオウレンジャーの悲鳴はついに途絶えた。
「被告人の返答がないため、判決を下し本件は終了とする。被告人、ホウオウレンジャーには刑法上の最高刑を適用し……」

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2015-01-13

飼鳥(8)

次に目覚めたとき、ホウオウレンジャー・リンは一切の拘束を解かれ、柔らかなベッドの上に横たわっていた。
清潔なシーツと、ふかふかとした枕の感触を感じ、つまりマスクを外されていることにも気が付いた。首から下はまだスーツを着ていたが、汗や体液で肌に張り付いたような感覚はなく、転身した直後のような楽な着心地だった。

暗かった部屋がやや明るくなり、ホウオウレンジャーは傍に座っている人影を見た。
「ひッ……!」
目に飛び込んできたメディア魔術師の姿に反射的な恐怖を呼び起こされ、あちこち痛む身体でベッドから逃げようとするホウオウレンジャーだったが、メディア魔術師はそこから床に膝をつき、頭を垂れて言葉を絞り出すように言った。
「すまなかった」
出会った頃のような、高村翔一郎の声と口調でメディア魔術師が続ける。
「裁判のことはどうか忘れて欲しい。助けるためにはあれしかなかった」
「え……っ?」
助かったの、と、手錠のない自分の手とメディア魔術師を見比べながらホウオウレンジャーは呟く。
「結果的に何とかなった。死刑は免れたんだ」
「……本当に……?」
法廷で死刑宣告が下った時より信じられない言葉に、素直な喜びは出てこない。
「一言で言えば、君は懲役刑ということになった」
喜んでいいのか、それとも、と一瞬考え込んだ末、やはりそれはホウオウレンジャー、リンにとってもある意味で最善の判決だと思い至った。懲役ならばまだ逃げ出すチャンスは0ではない。なにより、少しでも時間を稼げば、きっと仲間が来てくれる。
「言わせてもらえば、我ながらうまくやったよ。特にあの電撃、あれも俺が用意した。最後の1回を除けばそれほどの痛みはなかったはずだ」
珍しく饒舌になって裁判のトリックを話してみせるメディア魔術師の表情にリンは、プロデューサー・高村翔一郎としての顔を見た。
「でもあなたは、大丈夫だったの? あなたの裁判は……」
「俺はまあ、降格処分と言ったところだ。当分はこのゴーマ宮の外にも出られないし、下働きからやり直しだな」
「でも、裏切りは死、って……」
「結果的に、ホウオウレンジャーを捕らえたという功績を上げてしまったからな。それに何と言っても俺は、一度死刑を執行されたようなものなんだぞ」
お互いに悲惨な境遇ではあるが、過ぎてしまったことだけでも何とか笑い飛ばそうとして、二人は顔を合わせてしばらく笑い合った。

「ところで…… いつまでこうしていていいの?」
懲役とは言え、刑が確定したにしてはあまりに平和すぎる。裁判前の扱いを考えると、今のこの状況は逆に不安になるほどだった。
「そうだな」
メディア魔術師は腰掛けていた椅子からおもむろに立ち上がって言った。
「今は特別だ。実のところ、もう刑期は始まっている。刑の執行を担当する者がすぐに来る。そうなればまた監視付きの生活になるな」
その会話を待っていたかのように、部屋の扉がどんどんと叩かれ、金庫の鍵を開けるような音が響いた。その音の感じから、この小部屋が分厚い壁と厳重な鍵で外部から隔絶されていたことが分かった。
「来たな…… 仕方ない、またこれを着けてもらう」
そう言って、メディア魔術師はあの犬用の首輪を指にぶら下げて見せた。
反射的にあの屈辱の記憶が蘇り、ホウオウレンジャーの背中に冷たい汗が流れた。束の間の打ち解けた雰囲気が急速に厳しいものに変わって行くのを感じる。
「そ、その……」
手錠はともかく、首輪はどうしても着けなければいけないのか、と尋ねたかったが、あの法廷での決意を思い出して、もうここからは甘いことは言っていられないと言葉を飲み込んだ。
「形だけだ」
そう言ってメディア魔術師は拘束具をホウオウレンジャーの手と首に手早く巻き付け、首輪とベッドをロープで繋ぐとドアに向かって呼びかけた。
「どうぞ、準備はできています」
友人を迎えるような調子の声でメディア魔術師は言った。

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2015-01-14

飼鳥(9)

部屋に入ってくる人物をホウオウレンジャーはベッドの端に腰掛けて緊張しながら待った。
重い扉がゆっくりと開いた瞬間に、何とも言えない胸騒ぎがした。懲役刑の執行官という大仰な紹介のせいだけではなく、何か敵意をもってここに来た者がいる、という予感がしたのだった。

「やぁ……」
「お久しぶりね」
その予感は当たっていた。扉の陰から現れたのは、もう居るはずのない怪人、これまでダイレンジャーが倒してきた怪人達の姿だった。
紐男爵、ガマグチ法師、鍵道化師、そして口紅歌姫が、ショックで動くことを忘れたホウオウレンジャーを取り囲むように整列する。
「あ……あなた達……!」
「何を驚いているの?」
4名を代表するように、口紅歌姫が一歩進み出て言う。その冷静さを装った台詞に反して、口調と態度には愉快でたまらないという感情が現れていた。
「私達ゴーマは何度でも蘇る。特に、強い恨みを持って死んだなら尚更」
「ど、どういう事……!?」
怯えたように問いかけるホウオウレンジャーの言葉を素通りして、メディア魔術師は口紅歌姫に言った。
「もう一度お願いしておきますが、くれぐれも不要な苦痛を与えるようなことは……」
「ええ、分かっているつもりよ」
横顔を見せた口紅歌姫の頬には、消えかけてはいるものの大きな傷跡が残っていた。それはホウオウレンジャーが戦いの中で武器を当てて付けたものであり、口紅歌姫が今もこうしてホウオウレンジャーを特別に狙うような敵意を発散している原因だった。
「ねぇ、どういう事!? 懲役刑……を私は受けたんじゃなかったの!? 口紅歌姫、まさかあなたは……!」
「ほっほっほ、『懲役刑』」
口紅歌姫は可笑しそうに声を上げて笑った。
「この男にしては何だか、センスのない表現をしたのね。もっとあるはずでしょう。『慰安婦』だとか」
メディア魔術師の方を再び向いて尋ねる口紅歌姫が発した単語に、ホウオウレンジャーはびくんと背筋を引きつらせる。
「ノンノン、慰安婦はよくない。もっと可愛く、お人形さんというべきだね」
横から鍵道化師が身を乗り出すように口を挟んだ。
「最近じゃ、『ラブドール』なんてのもあるそうじゃない、ムヒョヒョ」
釣られて一斉に笑い出すゴーマの怪人達を前に、ホウオウレンジャーは手元のシーツの裾をぐっと握り締めた。メディア魔術師の口から懲役という言葉が出てからずっと、心の奥にはそれが何か性的な含意を持つものではないかという微かな懸念があったのだった。
(しかも、口紅歌姫が……)
ホウオウレンジャーに対して確実に強い恨みを抱き続けているはずの口紅歌姫が刑の執行に関わるとすれば、身体や心が正常なままで刑期を終えられるような内容ではあり得ない。今の怪人達の台詞はその心配に止めを刺すようなものだった。
完全に閉まりきらず少し開いたままの扉にちらりと目をやって、ホウオウレンジャーは心の中で呟く。
(逃げなきゃ……! ここで、今すぐ……!)
懲役が始まったら、隙を見つけ次第いつでも脱走してやろうと思っていた。だが口紅歌姫が隙を作るわけがない。逃げ出すチャンスは拘束の弱い今しかない。今なら、脱獄を許した責任がメディア魔術師一人にかかることもないはずだ。

「さあ、さあ早く始めましょう。私もう待ちきれないわ!」
昂ぶった声で紫色の大きな口紅を取り出す口紅歌姫の禍々しい気配に、ホウオウレンジャーはやはりここが最後のチャンスだと確信した。
口紅歌姫の手にしているものには見覚えがあった。初めて口紅歌姫が現れたとき、あの紫の口紅を塗られた女性達は正気を失い、「悪魔聖歌隊」として口紅歌姫の下僕に変えられてしまったのだった。
(洗脳……!)
絶対にあの化粧を受けてはいけない、とホウオウレンジャーは首から上だけ解けていた転身を瞬時に復元し、ピンクの鳳凰のマスクで顔を守った。
「あら、いけないわ。せっかく外してあげたのに。今度は、無理やり叩き割るしかないわね……!」
そう言って他の怪人達と共に詰め寄ろうとする口紅歌姫をぐっと睨みつけ、ホウオウレンジャーは全身に力を込める。

(今よ!)
後ろ手に縛られている両手を強引に左右に開き、バチンという音と共に鎖を引きちぎる。
間髪を入れず、座っているベッドのシーツを掴み、勢い良く立ち上がりざまに白いシーツをマントのように翻して怪人達の頭部に被せ、視界を遮る。
「うぅっ! 何……っ!?」
(やった!)
そして首筋に巻き付いている細いプラスチックの首輪を指一本で難なく千切ると、突然のことに驚いて立ち尽くしているメディア魔術師へ叫ぶように声を掛ける。
「ごめんなさい! 私、ここで逃げる! でも待ってて、必ずすぐにみんなを連れて戻ってくるから!」
「ま……待て!」
別れの挨拶もそこそこに、ホウオウレンジャーはその場で高く跳躍し、被せられたシーツを抜け出そうともがく怪人達の頭上を越えて、開いた扉の向こうへと消えた。

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2015-01-15

飼鳥(10)

広い廊下に待ち構えていた十数体のコットポトロが押し寄せるように向かってくるのを、再びジャンプして彼らの肩や頭をとんとんと踏み付けながら、空中を走るように飛び越していく。着地してそのまま止まらず走り続け、廊下の突き当たりの扉の、閉ざされた隙間から光が漏れてくるのを目指した。
(出口? いや、出口じゃなくてもとにかく、あいつらから少しでも遠く……!)
「通してもらうわよ!」
扉の前に立ちはだかる2体のコットポトロを左右に跳ね飛ばし、重い扉を押し開ける。

部屋の中は、無人の大広間だった。
中に敵が居なかったという所までは良かった。だが、ホウオウレンジャーの足をそこで止めさせたのは、部屋の中央に置かれた巨大な鳥籠だった。
「これは……?」
裁判の時に閉じ込められたあの鳥籠をそのまま数倍に拡大したような、中で人が寝転がれるほどの大きさの檻だった。天井全体がぼんやりと発光し、鳥籠の中に影を作らないよう照らしている。
コットポトロ達から数人がかりで狭い鳥籠に押し込められた時の記憶が瞬時にフラッシュバックし、ここに居てはいけないという本能的な危機信号を感じる。
(引き返す? でも、他に出口は……)
そしてこの鳥籠が、自分をまた刑として監禁するためにここに用意されたのではないかということに思い至り、ここから出なければと扉の方を振り返った時、何者かに足を掴まれた。
「あっ!?」
(しまった……!)
掴んだ片足を急に引っ張られ、尻餅をつくように倒されてそのまま床を引きずられてしまう。
右の足首のあたりに太い金色の縄が巻き付き、それが扉の向こう側から床を這うように伸びていた。
「紐男爵!」
最初に戦ったゴーマ怪人としてその技や能力のことはよく覚えていた。反射的に、腰に下げているはずの剣に手を伸ばすが、武器を奪われて何もない空間を手がかすめるだけだった。
「っ……!」
倒したコットポトロから何か武器を取り上げておけばよかった、と悔やむホウオウレンジャーの前に、扉を押し開けて紐男爵が姿を表した。
「全くいけませんねぇ。脱獄は重罪なのですよ」
「離しなさい!」
おどけたように言う怪人を一喝して、ホウオウレンジャーは掴まれていない方の脚で地面を蹴り、空中で身体を前転させて相手の頭へ踵落としのように蹴りを叩き込む。
「おおッ!」
予想外の反撃によろめくが、紐男爵は決して紐を外さずホウオウレンジャーをもう一度地面へ引き倒す。
「くぅっ!」
「大人しくさせるか」
気付かないうちにすぐ横に現れていたガマグチ法師の声に振り向いた時、ホウオウレンジャーはあの赤い恵比寿神の顔のような被り物を頭に被せられ、一瞬の暗闇を感じた後、ぐにゃりと全身の力を抜いてあっけなくその場に崩れ落ちた。

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