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2015-07-04

飼鳥(23)

メディア魔術師が去った後、鳥籠の周りの空間には異変が起き始めていた。
丸い檻の内側だけが薄明るく照らされ、外側は全くの闇に閉ざされて何も見えないというのはそれまでと変わらなかったが、その闇の中に何か大量の装置、機械がいつの間にか設置されていた。鳥籠を完全に取り囲むように置かれた機械群が、何かを準備するようにジジジ、カチカチと微弱な作動音を発し続けている。
媚薬の禁断症状から来る、全身の血管を虫が這うような掻痒感に苛まれていたホウオウレンジャーは、その細かなノイズを最初、幻覚の一部だと思い込んでいた。過去に口紅歌姫から受けた音波攻撃のように、音が身体を内側から痛めつけるような感覚にただひたすら苦しんでいた。だが、何度目かの気絶の後にも響き続けるその音が現実のものであることに気づき、苦しい呼吸の中で鳥籠の外の闇に目を凝らした。

その途端、周囲の機械群が一斉に発光した。
(……っ!)
室内の暗さに慣れていた目には、四方から無数の照明に照らされたようにも感じられた。しかし光量はさほどでもなく目はすぐに慣れ、その発光源の正体が全てTVの画面であることに気付いた。
視界に入っているだけでも数十台はあるかと思われる、大小様々なサイズのブラウン管が鳥籠を囲むように何段にも積み上げられ、それぞれの画面が灰色の砂嵐を映し出していた。
(TV……? どうして……?)
自分はまだ幻覚を見ているのではないか、とホウオウレンジャーはマスクの中で目をしばたかせる。しかし、檻のすぐ外に積み上げられたプラスチックの製品群は現実そのものだった。そしてまた、恐らくはメディア魔術師の能力がこの現象に関係しているに違いないと気付き、新たな種類の調教の始まりを予見した。
すぐに思い浮かんだのは、裁判の時にも上映された自分の映像だった。メディア魔術師は飽くまでも裁判の流れをコントロールする目的であの映像を作成したのだったが、後半に映された性拷問のシーンはここ数日の調教の間も断続的に脳裏で再生され続け、精神を汚染しきっていた。
(っ……!)
一瞬でも思い出すだけで、4本の手で性感帯を弄られて性的絶頂の手前を延々と彷徨わされた拷問の記憶がひとつながりの体験として蘇り、腰がぶるっと震えて子宮から湧き出すような濃厚な分泌液を漏らしてしまう。それは、肉体に直接受けた快楽の記憶だけではなく、カメラ越しに客観的に記録された自分の姿を目にしてしまったせいでもあった。
手ぶれした荒い映像の中、ピンク色の光沢に包まれて、戦闘員達の性感マッサージに悶え、お漏らしのように短いスカートを愛液で濡らすホウオウレンジャーの姿。敵の指がくりくりと動くたび、ビニールの人形にも似たピンク色の身体が何かのスイッチを押されたかのように跳ね上がる。
抵抗を封じられた身体を敵の手の中で好きに弄ばれる屈辱。行動の自由だけではなく、感覚や生理現象までを完全に支配されてしまっているという絶望感。
そして何より、快感の流れに常にブレーキを掛けられ続けている、気も狂いそうなもどかしさ……
絶頂の手前まで性感帯を虐め抜いて身体を疼かせておいて、その後一転して身体の芯に届かない、微弱な刺激だけを与え続ける。決して最後の一押しをせず、目の前に現れた出口にどうしても手が届かない感覚に身悶えさせる。それを3-4回も繰り返されただけで、敵に全ての武器を差し出すほどに心が折れてしまった。
絶頂への、快楽への期待をちらつかされるだけで、自分の精神は簡単に支配されてしまうことをあの時思い知った。そして今、それを何倍にも増幅した調教を受けさせられているのだった。
(で……でも…… 耐える…… あときっと数日…… みんなが来るまでは……!)
目の前に並んだブラウン管はまだ砂嵐を映し続けている。これから始まるであろう洗脳映像にはほぼ間違いなくあの映像が含まれているだろうが、目を閉じてやり過ごせるだろうか……と、そんなことを考えていた。

やがていくつかのTV画面が急に砂嵐を中断し、ぼやけた映像を流し始めた。そしてボリュームノブをひねるように徐々に音声が被さってくる。
『……っぁ、ぁ……んあ……っ』
薄黄色、肌色のぼんやりとした塊が画面のなかでゆさゆさと揺れ、男と女のかすかな声、荒い呼吸音のようなものが響いてきた。
(……!?)
すぐにはっきりと映し出されるようになった映像を見て、ホウオウレンジャーは目を疑った。肌色の塊として映っていたのはすべて裸の男女、そして彼らのあげている声はすべて性行為の最中の喘ぎだった。
(誰…… だれ……?)
真っ先に疑ってしまったのは、自分が映っているのではないかということだった。数十台のTV画面はそれぞれに違う動画のシーンを映し出しており、中には白人や黒人の男女が絡み合う図までがあった。自分や、それから仲間の男たちや知人の映像が流れているのではないことを見て取り、ある意味では安堵すると同時に、その映像の中身自体に身体が反応し始めてしまった。
『あぁっ、う、んん~っ!』
『んっ、ん、んっ、んふっ……』
画面のそれぞれでは若い男と女が思い思いの姿で抱き合い、もしくは腰を押し付け、結合しあって、まさに快楽に溺れるといった様を演じている。性行為の盛り上がりのピーク近くばかりが選ばれているのか、どの組も言葉らしい言葉を発せず、まるで動物のように行為に熱中していた。
視界一面に広がるこの光景に、ホウオウレンジャーは固唾を飲むようにして見入ってしまっていた。

映像は全くの無修正だった。抱き合う男女の図から時おりカメラが切り替わり、性器の大写しや、男女の結合部分の様子が画面全体に拡大される。普段であれば目を背けるような、非常識で不潔な部分のアップから目を離すことができない。性器がぬちゅぬちゅという下品な音と、汁や泡まで立てて抜き差しされる映像を見た途端、下腹に響くような、子宮を鷲掴みにされたような辛さが襲ってきて、下半身を床に擦り付けたくなってしまう。
(入れて欲しい……!)という、下品なまでの欲求がそれまでの何倍にも酷くなって、もう身体の疼きを精神力でコントロールすることができなくなりかけている。画面の中で、ペニスや性具を挿れられ、性感帯を弄られ、舐め回されて、好き好きに絶頂を味わう女たち。それを羨む心が抑え切れなくなっていた。
なぜ自分は見ているだけしかできないのか。画面の外に留め置かれ、手足を使えずにこんなものを見せられているのか……
そして、その心の傾きにとどめを刺すように、複数のTV画面からあの映像が流れ始めた。

『……っぁ、あぁ……っ! くはああぁ……っ!』
画面の大部分が生々しい肌色で埋め尽くされていた中で、その映像は異様な迫力をもって目に飛び込んできた。鮮やかなピンク色の人影、ホウオウレンジャー自身の拘束尋問のシーンがTVには映し出されていた。
『あああぁっ! もうやめて……許して……!』
記憶の中に残っている情景をなぞるように、また欠落した記憶のピースを埋めるかのように、身を焼くような快楽拷問の時間が蘇ってくる。背中から嫌な汗が吹き出し、内臓の疼きがさらに強さを増す。
『はぁあぁっ……! やめてっ、触るなあぁっ! そこは……ぁあああぁっ! うああっ、ああぁあ~っ!』
目を閉じても駄目だった。柔らかな肉を捏ねまわされ、敏感な突起を摘まみ上げられて、抑えきれない嬌声と共に全身を跳ねるように震わせるピンク色の戦士の姿が瞼の裏に焼き付いてしまっている。際限なく流し込まれる快感に精神力が尽き、イキたい、イカせて欲しいと願いながら、それでも安息が与えられない辛さのため、敵幹部や戦闘員にまで許しを乞うて泣き叫ぶ。
『ぶ、武器は……武器は捨てるからっ! もう抵抗なんて……もう絶対逆らいませんからあぁっ! お願い……! 許してぇ!』
(私……あ、あんな事を……!)
戦士としての、ダイレンジャーとしての自分の誇りなど、あの時にはもう捨ててしまっていたのかも知れない。裁判の時には流されなかった自分の屈辱的な映像を見せ付けられながら、意識の一角にそんな思考が芽生えてしまう。
ゴーマ宮で繰り返し心身への拷問を受け続け、両足を壊されても、それでもまだ心はくじけていないと、今の今まではそう思っていた。だがそうではなかったのかも知れない。薬や機械など使うまでもなく、最初の拷問でゴーマ流の快楽を身体に教え込まれた時点で、自分はすでに武器も、戦う力も、色々なプライドも、全てを失っていたのかも……
薄ぼんやりした画面の中にいつまでも映し出され続ける自分の痴態を眺めながら、ホウオウレンジャーはがっくりと全身の力を抜き、床に体重を預けた。
『全部! 本当に全部捨てたのぉっ! もう何もないからぁ! も……もう終わりにしてぇ! あ……あぁ~~っ!!』

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