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2018-02-18

迷鳥(7)

「さて……と、どうしたものかしらねぇ」
聖歌隊を従えてメガイエローに歩み寄った口紅歌姫は、軽い口調でそう言って、黄色いスーツの背中や腰が床の上でぷるぷると震える様子を見下ろした。
「うぅ……っ!」
跳ね起きようとしたが、肩に力を入れただけで頭がズキンと痛み、まだ立つことはできそうになかった。
「ここにはリンが来ると思っていたのよ。あのネジイエローの準備ができるのもまだかかりそうだし……」
(ネジイエロー…… やっぱり……!)
口紅歌姫が自分より先にネジイエローと会っていたのは予想した通りだったが、それが分かったところで今はどうすることもできない。

リンがここへ来てくれたら、と拳を握り締めたとき、両腕がぐいと引っ張られて身体が真上へ持ち上げられた。
「あっ、あ……?」
視線をちらりと横へ向けると、そこにあったのは悪魔聖歌隊として操られた女性の顔だった。二人がメガイエローの肩を抱き起こし、力の入らない身体を無理やりに立たせている。
「私はお前に用はないの。でもネジイエローは何だか…… お前に特別な興味でもあったみたいね」
左右から腋をぶら下げるように抱えられたメガイエローは、自分の足だけで立つ力がまだ戻らないまま、口紅歌姫の方を向かされている。
「メガイエローの…… マスクを剥いで持って帰る、なんて言ってたかしら」
マスクを剥ぐ、という言葉の響きに何か言いようのないおぞましさを覚えて、メガイエローは脱力した全身に鳥肌が立つのを感じた。
「一体どうするのかしらね…… こんな細い首、ちょっと捻ったら頭ごともげてしまいそうだわ」
口紅歌姫はいつの間にか手に持っていた、閉じた唇を模した刃を持つ青龍刀をメガイエローに向け、その切っ先を黄色いマスクの顎のあたりにカチカチと触れさせる。
(うぅ……っ!)
このままではまずい、と身体に力を込めるが、まだ両側からの拘束を振りほどくほどに回復が追いついていない。

「私が探してるのはリンよ。答えなさい、ホウオウレンジャー・リンは今どこにいるの」
「し、知らない……!」
事実、千里もリンを探してここに辿り着いただけで、何も隠し事をするつもりはなかったが、その返答は何か口紅歌姫に誤解を与えたようだった。
「あら、本当にそうかしら。メガイエローはなかなか油断がならないと、ネジイエローはそう言っていたわよ」
「そんなこと……」
そこで、口紅歌姫が頭でも掻くように、青龍刀を持った手をふらりと軽く振り上げるのをメガイエローは見た。

次の瞬間、メガイエローは胸部の中央が焼けつくような激痛と打撃、目の前で火花が噴き上がるのを感じた。
「きゃああぁあぁっ!」
絶叫すると同時に、斬り付けられたことを理解し、表面の焼け焦げたスーツから上がる煙を顔で振り払うように胸の痛みにもがいた。
まさか今の会話の途中で剣を振り下ろしてくるとは、というタイミングで攻撃を受け、まだ音波攻撃のダメージから回復しきっていない身体が膝から崩れ落ちそうになる。だが皮肉なことに、両脇から二人の女性にすぐ体重を支えられて、倒れることすらさせて貰えなかった。
「あぁ……っ! あっ……!」
乳房の谷間近く、激しく痛む部分を手で押さえることもできないため、シュウシュウと白煙を上げるスーツの熱感に耐えながら首をよじって呻くしかない。
(いたい…… 痛い……!)
メガレンジャーとして戦ってきた中でもそう何度も受けたことのない、刃物による斬撃。重量のある大刀で正面から斬り付けられ、スーツが裂けたわけではないが、なかなか引いていかないジリジリとした痛みは耐え難く、押さえ付けられている両腕をばたばたと動かし、息を荒げてマスクの中で深い呼吸を繰り返す。

「ち、違うの……! 勘違いしてるみたいだけど、私はリンさんとは……」
表情の読み取りづらい口紅歌姫が、このまま第二撃を加えてくるのではないかとメガイエローは必死に拘束を解こうとする。攻撃を受けて急上昇した心拍と血圧のおかげで身体がようやく戦う体制に入ってきたが、操られた二人の力はそれにも比例して肩に抱き着く力を強めた。
「居場所じゃなくても、何か知ってることがあるでしょう?」
完全にこの場の主導権を握っている口紅歌姫は、丁寧に情報を引き出すつもりなど少しもない様子だった。そして、胸の傷が、刃に毒でも塗られていたかのようにずっと不快に痛み続けるのもメガイエロー・千里の焦りを増した。

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