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2015-01-12

飼鳥(6)

奥の扉は裁判所に通じていた。厚い扉が音を完全に遮っていたらしく、扉が両側に開くと、さっきまでの暗い小部屋が裁判所の隣室だったとは思えないほどの喧騒が漏れてきた。

競技場かコンサートホールのように、広い部屋の周囲に沿って2階、3階の高さまで階段状の観客席が広がり、数百名と思われる人間が着席していた。狭い鳥籠の中からざっと見回した限り、怪人や戦闘員のような人物はおらず、ほとんどが中国の伝統衣装に似た服装をしていた。
(これがゴーマ宮の……)
鳥籠の中に囚われた、遠くからでも目を引くピンク色の戦士が部屋の中央に引き出されてくると、途端に客席がざわつき、その中に怒号や愉快そうな笑い声が混じっているのも聞こえた。
直接に罵声を浴びせる者や、物が投げられてくるようなことはなかったが、ホウオウレンジャーはこれから加えられるかもしれない侮辱に備えて固唾を飲んだ。

木槌で机を叩く音と、静粛にという声が響き、正面の高い席に3名の裁判官が座っていることに初めて気付いた。
「これより特別裁判を開廷する」
特別、という言葉にホウオウレンジャーは改めて身を緊張させる。別の被告席に居るというメディア魔術師の姿を探すが、それらしい席はここからは見当たらなかった。
「被告人、ホウオウレンジャー」
裁判官の言葉がそこで一度止まり、今のそれは自分に向けて呼びかけられたのだということに気付いてホウオウレンジャーは返事をした。
「はい」
落ち着いた、よく通る声が裁判所の空間に響く。声が恐怖に震えなかったことにホウオウレンジャーはまずは少し安心した。
少しだけ心に引っ掛かったのは、裁判官や観客に向かって檻の中でひざまずく姿勢を取らされていること、そして、リンという名前の少女ではなく転身した戦士の名で裁かれようとしていることだった。
(でも、その通りだわ)
ゴーマからすれば、憎しみや処罰感情があるのはダイレンジャーの一員としてのホウオウレンジャーに対してだろう。その本人としても、ここまで来れば最後まで戦士としての立場を貫くつもりだった。

「被告人は本年2月より、ダイレンジャーの一員として我々ゴーマに敵対し、ゴーマの闘士、および戦闘員を多数殺害し……」
裁判官がホウオウレンジャーの罪状を読み上げ始める。正直なところ、その内容には何一つ心を動かすようなものはなかった。
「……ものである。被告人はこれを認めるか」
「認めるわ、でもそれはゴーマの立場からの勝手な言い分よ!」
狭い鳥籠の中で精一杯に背筋を伸ばし、声を張って、ホウオウレンジャーは思うままの言葉を述べた。
「私達が倒してきたのはどれも、侵略のために送り込まれた怪人や……」
メディア魔術師の行動はただそれだけではなかったことをちらと思い出しつつ、滔々と論述を続ける。
最初静まり返っていた観客席が、鳥籠に詰め込まれた姿とは対照的なホウオウレンジャーの態度と発言を受けて、また騒々しくなり始めた。
「……だから後悔も、謝罪もしない。こんな裁判、始めから無意味だわ!」
必ず助けると言っていたメディア魔術師が何か弁護の方法を考えていたとしたら、その気持ちや計画に反することになるであろう主張だったが、もしそうだったとしても、ここでゴーマに媚びるような発言や、命乞いをする気は絶対になかった。
「うむ……」
壇上の裁判官達も、流石に思っていた以上の反論に気を飲まれているようだった。しばらくの間、3人の間での小声でのやりとりがあった末、左端の裁判官が正面に向き直って口を開いた。
「被告人は罪状を認め、またそれについて異議を申し立てなかったものと見なす」
続いて中央の、裁判長に当たると思われる人物が勿体ぶった態度で話し出した。
「被告人の犯罪、およびその後の態度は極めて悪質なものであり、死刑かそれに準ずる刑罰が相応しいものと考えられる。この量刑について意見を述べる者はいるか」
死刑という単語は十分に予想していたにもかかわらず、ゴーマの裁判官の口から実際にそれを聞いて、心臓が締め付けられるような感覚が襲った。そして、それに準ずる刑罰という言葉も、先程のガラによる尋問を思うとさらに悪い結末しか思い浮かばなかった。

もう後戻りはできない、覚悟を決めるしか、と震える手を懸命に止めようとするホウオウレンジャーの耳に、あの声が飛び込んできた。
「発言させて下さい」
メディア魔術師が、ホウオウレンジャーからすると斜め後方の出入口から進み出てきて、鎖を引きずるような音を立てて近くの卓の前に立った。
(高村さん……!)
本当に来てくれた、とホウオウレンジャーはマスクの下に涙を浮かべた。たとえこの弁護が失敗に終わったとしても、判決後にもう一度会って、最後に少しの間でも二人の時間を過ごすことができたら、とそこまで考えたところで、裁判官の声が響いた。
「メディア魔術師は次の裁判の被告となっているはずだが」
「今は参考人として出廷しました」
その口調は、先程のホウオウレンジャーの論述とはまた違った、切迫した様子を帯びていた。

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Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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