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2016-04-17

窮鳥(1)

第10話「さよならイエロー」より

イエローフォー・小泉ミカはふらついた足取りで無人の工場地帯を彷徨い歩いていた。黄色のバイオスーツに身を包み、時折横へ倒れそうになる身体を自分で抱き抱えるようにしながら辛うじて歩行を続けている。

「はぁ…… はぁ……っ!」
すでに操業を停止した企業の敷地らしく、延々と続く灰色の倉庫群や巨大な金属のパイプライン、断続的に現れる貯蔵タンクなどからは何の作動音も伝わってこない。街の喧騒や車の走る音さえ聞こえず、剥き出しの機械類を風が吹き抜ける音、そしてイエローフォー自身の足音と呼吸音だけが響いていた。
もう一時間近く、同じような風景の中を歩いていた。よほど大きな工場が集合していたのか、それとも本当に同じ場所を何度も通り過ぎているのか、判断力が極度に低下していて分からない。マスクの頭部に配置されたコンピューターの状態表示部も、スーツの致命的な機能異常や故障を示す赤色の点滅が続いていた。
(は、早く…… みんなに……! このままじゃ、身体がもたない……)

新帝国ギアの兵器、バイオキラーガンで銃撃された直後から、今のような意識の混濁と疲労感の蓄積は始まっていた。銃を手にした敵幹部・メイスンの言葉によれば、反バイオ粒子を照射することによりバイオマンの力を失わせるのがこの兵器の原理だということだった。しかし今のこの状態は明らかに、バイオマンとしてのエネルギーではなく生命そのものに深刻なダメージが及んでいるとしか思えなかった。
先程バイオキラーガンに撃たれた胸や脇腹、大腿部といった部分には、反バイオ粒子の光弾がスーツや身体のその部分に浸みるように打ち込まれた時の感触が残っている。深い火傷のように、ジンジンと痺れる感覚が周辺の皮膚や筋組織へも徐々に広がっていく。
そしてそれとは別に、サイゴーンの念力で空中から地面へ叩き付けられた時の痛みがなかなか消えずに体のあちこちに残っているのだった。腕や膝周辺の打撲傷、いつもなら徐々に消えていくはずの痛みが、恐らくは身体や細胞の色々な機能が低下しているためにずっと引いていかない。荒い呼吸を繰り返し、必死で息を吸っているのに、肺に空気は入ってもそこから酸素が取り込まれていかないように感じる。そうした息苦しさはあるが、もし変身を解除すればその時の脱力感で完全に気を失ってしまいそうな気がして、あえてバイオスーツを纏ったままの状態を維持していた。

「みんなに……みんなに伝えなきゃ……! 反バイオ粒子は……」
痛い、苦しいといった言葉が声に出そうになるのを避けようと、イエローフォーは必死で仲間へ伝えようとする台詞を口の中で繰り返す。敵兵器の弱点に気付いたのは実際に撃たれた自分だけのはずだった。襲撃後の混乱のためにそれを話す間もなく、気付けばここに迷い込んでしまったまま元来た方角さえ分からないというのは全く最悪の事態だった。

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お世話になっております。鈴談です。
うわぉっ! イエローフォーのお話が!これは実に楽しみなのです。悶えるイエローフォーの小説を鳥籠さんの筆で読めるとは、実に、実に嬉しいことであります。今年度はお互いにいろいろできるといいですね。続きを楽しみにしております!

Re: コメント

ありがとうございます! いつもお待たせして申し訳ありません。

原作10話、今では考えられないようなピンチに特化したストーリーですよね。
ちょっとした工夫によってものすごい成人向けストーリーに変化すると思います。
連休中は製作時間を十分に取れるようにしましたので、
ピンチシーンやサービスシーンを収まりよく盛り込んで連休前半にはラストまで公開します。
「逃鳥」も省略していたシーンを思い切って文章にしますよ。
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Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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