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2016-04-30

窮鳥(2)

一向に変わらない景色に耐えきれなくなり、建物の壁に沿って進んでいたのを外れて、日の当たる見通しのいい場所を探しながらよろめき歩く。
廃材が山のように積み上げられた一角が目に入り、あのあたりで一度腰を下ろそうとやや歩みを速めた時、舗装の代わりに足元に敷き詰められていた鉄板の継ぎ目にブーツの爪先が引っ掛かり、イエローフォーは前方へ飛び出すように転倒した。
「うぅあっ!」
長らく車両の通り道に敷かれ、凹凸の反り返りがついた厚い金属板の上に身体が投げ出され、銅鑼かシンバルの様な音が辺りにしばらく響いた。
「ううっ…… う……!」
赤黒く錆びついた鉄の上で、ジャリッ、という音を立てて身体を丸める。日光に照らされていた鉄板の熱がスーツ越しに伝わってきて、胸や脇腹に心地良いほどの温もりが感じられてしまう。疲労感からこのまま眠り込んでしまいたいという気持ちさえ起こるが、この状況でそれはあまりにも危険だった。
やっとの思いで立ち上がり、ふらふらと十数メートルを進んだ後、廃材の山のふもとに並べられた大きな古タイヤの上にまた倒れ込んだ。


全身が弛緩し、ほとんど仰け反ったような体勢で廃材を背に凭れ掛かっている。荒い呼吸に胸を上下させ、シート状の電子回路とバイオマンのエンブレムに日光が反射して煌めいている。
しばらくそのまま目を閉じていても、疲労感と身体の痛みはなかなか楽にならなかった。体内のバイオ粒子と反バイオ粒子が互いにぶつかり合い、二種類の血液が混ざり合わされているような感覚が続く。筋肉や内臓の疼痛に感覚を集中すると、黄色と灰色の混ざり合ったマーブル模様が見えてくるようだった。
いくら待っても体力が回復しない。酸素が足りないような苦しさも全く同じだ。イエローフォーは白いレザーグローブに包まれた手の平でマスク頭部を叩き、その手をまた身体の横へ落とす。
(通信がきかない…… 一体ここはどこなの? みんなにこの場所を知らせるには……)

マスクに挿し込む日差しをぼんやりと眺めている内に、ガシャン、ガシャンという金属の擦れ合うような音が遠くから聞こえ始めた。
工場の敷地に居たせいか、しばらくはその音が意味するところに気付かなかった。しかし徐々に近付いてくる金属音は、工場内の機械でもなければバイオロボや仲間たちのものでもなく、もっと異様な響きを帯びていた。
本能的に危険を感じて、イエローフォーは仰向けの体勢から身を起こした。
広場のようになった廃材置き場に、十数体の機械化戦闘員、メカクローン達が横一列に並んで土煙を上げながら迫ってきていた。
「あ……っ!」
この1時間誰にも発見されないできたために考えもしなかった戦闘員との遭遇。イエローフォーは愕然として敵を見回す。
標的のイエローフォーから離れた場所に一事停止し、能面のような顔に開いた目を光らせながら、無言で一斉に戦闘開始のポーズを取るメカクローン達。しかし敵側の戦力は今のところそれだけだった。確証はないが、追加の戦闘員や獣士たちの応援が来る気配は感じ取れなかった。
「い……いいわ! やってやるわ!」
敵を前にすると、尽きかけた力がなぜか戻ってくるようだった。反バイオ粒子に冒された身体の苦しさを自分自身の力が上回って、今なら必ず勝てるという気がした。

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管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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