FC2ブログ
2016-06-16

衝突(2)

予想していた通り、深夜の国道には車も人影もほとんど無かった。照明を最小限に抑え、とにかく目立たず目的地へ、と一直線に山を目指す。肝心のマシンや自分のスーツがどうしても人目を惹く色と見た目であることには、冷静さを欠いていて思い至らなかった。
しかし、行程が山道へ近付いた頃に折悪しく雨が降り始め、それをきっかけに自分の装備や外見のことにようやく気付かされることになった。
キバーマシンに乗っているときに雨に降られたのは初めてだった。もちろん水濡れを気にするようなマシンではない。ダイレンジャーのスーツやマスクも、身体能力強化と共に撥水性や保温性といった性能はいわゆるライダースーツと比べて段違いに上で、時速百km以上のスピードで雨の中を走り続けていてもスーツ内部を快適な状態に保ってくれている。ただし、降りかかる雨でシートが濡れ、摩擦抵抗のない光沢生地に包まれた尻や太腿がカーブのたびにヌルヌルと横滑りすることはどうしても意識せざるを得ない。
真夏の日中に、直射日光を浴びて熱くなったマシンに腰を下ろす時にも気にしたことがあったが、尻というよりも局部を含めた部分をこうしてシートに押し付けて跨ることには少々の抵抗があった。
「止まない…… でももうここまで来たら、行くしかないわね」
どんどんと強くなっていく雨風を胸やマスクの前面でバチバチと浴びながら、ハンドルを握るグローブの掌、ペダル類を操作するブーツの足裏が滑ってしまうことがないように手足の位置を微調整する。あとはぬかるんだ路面のスリップだけに気を付ければいいはずだったが……

そうこうしている内に周囲から人家の気配がなくなり、道路が蛇行し始めた。
目的の場所は地図には記載されていないが道順だけは記憶に残っている。今のこの道をもう少し進み、三つ連続したトンネルを抜けると、目的地に通じる目立たない脇道があるはずだった。そろそろトンネルが現れるという時、前方で赤とオレンジ色の明かりが点滅しているのに気付き、ホウオウレンジャーはマシンの速度を落としてゆっくりと進んだ。
最初、他の車両が停まっているのかと思ったが、車ではなかった。内部照明が消えて黒い影の塊となったトンネルの入り口を金網フェンスやコーンが横に塞ぎ、鎖状に連なった非常灯が結わえ付けられてばらばらに点滅している。さらに、『通行禁止』『工事中』といった縦長の看板が数枚。
「工事……?」
半日前にここを通った時にはこんな封鎖や看板は無かったはずだ。道を間違えたわけでもない。ゴーマが無関係の人間をここに立ち入らせないように慌てて拵えたものではないか、という疑念が直感的に浮かんだ。
「怪しいわ……」
マシンを降り、警告表示の群れに近付く。雨の勢いはますます強くなっており、水滴の降りかかるマスクの内側が独特の音響に満たされている。
工事中の表示にも関わらず作業員らしき人間、機材はなく、金網越しにトンネルの中に目を凝らしても闇が深く満たされているだけだった。この道路封鎖がゴーマの仕業であることは間違いないと結論し、ホウオウレンジャーはマシンの元へ戻る。
シャワーを浴びるような大粒の雨に打たれ、マシンも自分自身もスーツ表面はずぶ濡れのはずだったが、水の浸み込まないスーツの着用感は奇妙な感覚だった。座席に跨り直すと尻の下でシート部分がぐちゅりと音を立てるが、内股で機体を挟み込んで身体をしっかりと固定させる。マシンを発進させ、その場で方向転換して元来た方向へ数十メートルほど戻る。そしてスピードを落とさず、逆に加速しながら大きく旋回して、フェンスで封鎖されたトンネルに向かって進んだ。
「はぁっ!」
障害物に突っ込む直前でマシンを跳躍させて、背の高さほどのフェンスを飛び越える。そしてそのままの勢いで暗いトンネルの中へ進入していった。

予想通りというべきか、トンネル内部で工事などは行われておらず、照明が消えている以外は何の変哲もない路面があるだけだった。
(やっぱり……)
機体から発する光だけで前方視野にも不自由はない。逆に、雨が降りかかってこない分トンネル内の方が安全とも言えた。戦闘員の襲撃や罠などが気にならないでもなかったが、短いトンネルをあっという間に通過し、次のトンネルの入り口には黄色いバリケートが一つ置いてあるだけなのを見て、安心して軽くそれを飛び越える。
(何もないみたいね)
暗く静かなトンネル内に自分のマシンの駆動音だけが響くのを心地良く感じながら、ホウオウレンジャーはスピードを一気に上げて二つ目のトンネルを抜け出した。 そして三つ目、最終のトンネルに飛び込み、内部の大きな左カーブを、機体を傾けながら高速で駆け抜けた。

次へ

コメント

管理者にだけメッセージを送る

プロフィール

鳥籠

Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

サイトの説明
目次

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ