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2016-06-25

衝突(5)

「いやあ、ひどい雨だわ」
横から激しく吹き付ける風のため、警官の紺色のレインコートには首や袖口から雨が振り込んで、下の制服まで相当に濡れてしまっているようだった。下半身も、長靴は履いているが腰から膝にかけてズボンがずぶ濡れになっている。リンは騒動の原因である自分だけが防水透湿のスーツで雨や湿気から守られていることに申し訳なさを感じた。

銀色の光を放つ大型の投光器が頭上に吊るされ、ホウオウレンジャーの姿のリンはちょうどその光を直接浴びる位置に居た。深夜のトンネル内で唯一の光源に至近距離から照らされ、雨を浴びた後のピンクと白のスーツはいつもに増して光沢が強調されて見えた。
「何着てるんだ、その服? そのツナギ……」
「『繋ぎ』……?」
「ライダースーツっていうのか? ずいぶん薄いなこれは」
警官は、さっき後ろから手を掴んだ時のように無遠慮な手付きでホウオウレンジャー、リンの肘のあたりを掴み、ピンク色の被膜が肌に張り付いた腕を摩った。そして、細く柔らかいが引き締まった筋肉の付いた腕の感触が気になったか、半袖を重ね着したようなデザインのスーツの肩口から二の腕までを、その硬さを確かめるように二、三度ゆっくりと握る。
その接触行為に好色な目的があることは、腕を掴むついでにその内側の柔らかい部分を指の腹で撫でるような動きを繰り返すこと、それに白いスーツを押し上げる胸の膨らみに向ける視線からほぼ間違いなかったが、今はそれに文句を言える立場ではなかった。
「プロテクターとか外れたのか?」
あの転倒事故で衣服が全く破れていないということが警官にはやはり信じられないようだった。多くは革や分厚い化繊でできているライダースーツとは違う、ピンクの密着スーツがその表面で雨水を弾くのを見て、そして同様にヘルメットとは思えない薄そうなマスクにも罅どころか傷ひとつ付いていないのを不思議そうに眺める。
「いえ、丈夫なスーツですから……」
外側からは着用者の顔をほとんど伺うことのできないマスクをじっと覗き込まれ、またスーツの各所に懐中電灯を向けられて、リンは直接の仲間でも敵でもない人物にじろじろと観察されることに一種の気恥ずかしさを覚えた。

「それであの…… 私は……」
そろそろ自分の正体をはっきりさせておかなければいけない、とリンは戦隊の名を改めて思い浮かべる。しかし、敵を相手にした"名乗り"とは違って、こんな取り調べを受けているような立場で名前を出すのは何か抵抗があった。
リンは呼吸を整え、用意した言葉を一息に読み上げるように言った。
「私は五星戦隊ダイレンジャーの、ホウオウレンジャー・天風星リンです」
「は?」
警官の反応は想像していた以上に悪かった。「そうか、君があのダイレンジャーか」という返答をその直前まで心のどこかで期待していたリンは、相手の態度を受けて逆に黙り込んでしまった。
「レンジャー?」
「は、はい…… ダイレンジャーと言って……」
戦隊やゴーマのことを警察官が知らないはずがない、と考えたリンは一体どこから説明したものか迷うが、警官は聞く耳を持たないといった様子でその言葉を遮った。
「そういうチーム名か?」
暴走族や、"走り屋"のようなものを想像されてしまったことが相手の口調から読み取れ、焦りが増す。
「あっ……いえ違うんです、ダイレンジャーは」
「レンジャーはもういいから!」
強い口調で警官は言い、やれやれといった様子で制帽を一度脱いで額の汗を拭うとまた被り直した。
「免許証!」
「め、免許証……」
全く予想もしていなかった言葉だった。県境の山を目指してキバーマシンで出発したときから、いやそもそもダイレンジャーとしてこのマシンで移動するようになった時から今まで、公道でバイクを運転しているという感覚がまるでなく、免許証の提示を求められる状況というものを想像したことが一度もなかった。
「私、免許証は……」
「バイクに入れてた?」
「いえ、あの」
「持ってないのか!?」
警官は呆れを通り越したといった表情でトンネルの天井を仰いだ。

この警官の頭には、相手が自作の衣装で改造バイクを乗り回している集団の一員、それも無免許で、という思い込みしかなかった。だがそれも無理のないことで、怪人が現れたわけでもない場所で、肌に張り付いたピンク色のライダースーツを着た人間を見て、それが何か特殊な所属にある人物だと考えることの方が難しい。
「そ、それは…… バイクじゃなくて…… ごめんなさい、最初から説明させてください」
「聞いてられるか!」
マスクの額のあたりに唾が飛び散るような勢いで間近から警官に怒鳴りつけられ、リンは誤解を解く機会を失って立ち尽くす。こんな状況でさえなければ逃げ出すか、それとも力づくで解決するかという場面だが、腕や肩を痛め、そして横転したまま全く何の反応もなしに雨に打たれているキバーマシンをその場に置いては逃げ出せなかった。

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コメント

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ジワジワとしたフェチ熱

この話、物凄く楽しみにしてます♪
戦隊ヒロインが警官に事情聴取などで追い詰められるパターン、、
超常的な意味で異様な戦隊ヒロインが、普遍的な物事に戸惑い辱められるという。。
う~ん、今までのような直接戦闘・拷問や痴漢でのフェチとは全く違う、異様なフェチ熱を擽られますな。
続きもワクワク^^

Re: ジワジワとしたフェチ熱

Twitterでもかなり盛り上がったネタですからね。本気を出しますよ。
これを小説にするのは今までありそうでなかった試みだと思います。
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鳥籠

Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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