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2016-09-19

嚥下(2)

怪物の口中でメイの視界が一瞬暗黒に閉ざされた。そしてそのとき、メイが闇とともに強く感じたのは、意外なほどの冷たさだった。カエルのような姿をしたドーラブーガラナンの湿った肉は、水に濡れた衣服を首に巻き付けられたような温度と感触でスーツ越しにメイの肌に感じられた。
生き物の体内とは思えないほど冷たく、しかし粘り気のある唾液が、ピンク色の滑らかなスーツの背に、腹に、塗り付けられる。素肌の上を薄い素材だけで護っているスーツの表面を粘液でマッサージされて、メイは生理的な嫌悪感に背を仰け反らせた。
「ふぅああ! あはぁああぁ!」
窮屈な闇の空間で、マスクの後頭部が湿った肉壁に押し付けられるが、奇妙な弾力とともに頭が押し返され、そして逆に膨らんできた壁によって、胸から上が揉みくちゃにされた。

「あ~んっ、んがっ、んがっ……」
ドーラブーガラナンが口を開閉するたびに上下の牙がメイの背と腹、そして腕に食い込むが、その痛みよりも口腔粘膜の感触の方がずっと耐え難く、メイは牙の先端が身体に突き刺さるのも構わず身をくねらせ、そして両脚をじたばたと駆けさせて口の中から上半身を引き抜こうとする。
「あぁっ、やっ、放してっ!」
だがその必死の抵抗はドーラブーガラナンにとっては獲物が毎度繰り返すいつもの無駄なあがきに過ぎなかった。メイの腰から先を空中へ振り上げるように自分の上体を大きく仰け反らせ、獲物が真っ逆さまに喉の奥へ滑り込んでいくようにその重心を移動させる。
「あっ、あぁあっ!」
それまでは口から喉へのやや狭いくびれに肩で引っかかっていたメイの身体が、この動作によって一気に一段奥へと嵌り込んだ。口腔内にできた急な坂を頭から滑り落ち、ジュボン、と音を立てて肩から先が密集した肉質の中へ入り込んだのが感じられた。濡れ雑巾を思わせる粘膜の襞がきつく首に巻き付き、じゅるじゅると締め上げてくる。
(く、苦し……い……)
息の止まってしまいそうな感覚に上半身を強く震わせると、首周りだけではなく、胸や腰に至るまでぎっりと肉襞に隙間なく取り巻かれているのが分かった。特別に首を狙われたのではなく、狭い食道で全身が締め付けられており、マスクで護られた頭部だけが無事なのだということに思い至る。
何しろ上半身をほぼ全て呑み込まれ、マスクの中に全く光が届かないのだ。自分の身体がどんな姿勢にされているのかさえ、拘束感のためにすぐに知ることができない。こんな状況でもまだ息ができ、悪臭や消化液の影響から逃れられているのはせめてもの救いだったが、それでも闇の中で何も見えず、そして胸や首を四方から満遍なく圧迫された状態では、脱出どころか意識を保っているのが精一杯だった。

(手……! 何か掴むもの……!)
両腕を胴体に縛るように巻きついていた太い舌がいつの間にか外れていることに気付き、どうにか身体を上へ押し戻そうとしたメイは手足をもう一度ばたつかせた。しかしその時、自分の身体のうち怪物の体外に出ているのがすでに膝から先のわずかな部分だけであることに気付き、愕然とした。
メイ自身が気付かないうちに、頭を下に逆さまになっていたメイの全身は摩擦のない食道の粘膜をゆっくりと滑り落ち続けていた。声にならない恐怖の叫びとともに激しく身をくねらせるが、その動きが余計に滑落のスピードを速くする。もう膝も動かせなかった。外から見たドーラブーガラナンの口には、メイの白いブーツだけが尖った歯列の間から突き出し、足首の関節をもぞもぞと動かしているのが見えるだけだった。
「あぁあっ! あっ、助けて! 誰か……!」
ミチミチと身体を取り巻き、締め付けてくる肉の閉塞が腰から下半身にまで及び始める。ブーツの甲が最後まで引っかかっていた怪物の口がばくんと開き、また完全に閉じると、プテラレンジャー・メイの姿は全く外界から見えなくなった。

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コメント

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ハリケンブルーの方もボチボチお願いします!!🙏

Re: タイトルなし

すいません返信すら1ヶ月かかってしまいました!
先に果たさないといけない約束がメガイエローなんですが、ハリブルもネタ出しはしておかないとだめですね。
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