FC2ブログ
--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2017-05-06

迷鳥(3)

しばらく混乱した会話が続いたものの、最終的には二人共がお互いの立場と状況を理解することができた。
きっかけになったのは、千里がふと思いついて現在の時刻と年月日を相手に尋ねたことだった。
「1993年!?」
ピンク色の戦士が口にした、千里からすれば3年前の日付が聞き違いでも勘違いでもないことが分かると、今いるここが一種のパラレルワールドのような世界なのだという結論に落ち着くしかなかった。
(そうか、途中で通り抜けたあの空間、きっとあれがネジレ次元で、何かの拍子に出口がこの世界と繋がっちゃったんだわ……)

「分かった、あなた達はそのネジレ次元から来た敵と戦っていたのね。私はゴーマ族と戦うダイレンジャーの、ホウオウレンジャー・リン。リンと呼んでくれればいいわ」
「私は電磁戦隊メガレンジャーの……」
メガイエローという名に加えて本名を明かすべきかを悩んだが、味方以外には変身前の正体を知られたくないということを強く念押しして、下の名前だけを名乗った。

「ところで、その手錠は……」
「そう! これがそのネジイエローに付けられたものなの! まずはこれを壊さないと……!」
会話の間ずっと身体の前へ下ろしたままだった両手首を胸元まで持ち上げて、見るからに凶悪な造型の手錠を示す。元の世界にどうやったら戻れるかを話し合うより前に、解決しなければいけない危機がいくつも差し迫っていた。
「まかせて!」
ホウオウレンジャー・リンは右腰に着けた細身の短剣を引き抜き、目の前で縦に構える。
「そのまま動かないでね」
「う、うん」
手錠の中央付近を目掛けて剣が振り下ろされると、鋭い打撃音と、手首に金属が重く食い込む感触と共に手錠が真っ二つに破壊された。
「やった……!」
引き千切れたような装置断面から白い煙を噴き出して発光を止めた手錠は、手首を拘束する施錠機能を同時に失って、いくつかの残骸となって足元へ転がり落ちた。
白いグローブの上から手錠に軽く締め付けられていた部分を千里は撫でて、手首から先が正常に動くことを確認する。
「ありがとう、これで……」
その時、背後から近付いてくる怪しい気配に二人は同時に気付いてそちらの方を振り返った。

「今日はなんだか…… 想定外のことばかりが起こるのね」
周りの空間を歪ませるような強い殺気を発しながら、ゆっくりとした歩調で近付いてきたのは、黒と黄色のアーマーに身を固めた女怪人、ネジイエローだった。
「メガピンク…… ではないようね。誰だか知らないけど、その娘をよこしなさい!」
ネジイエローがそう言って右手に力を込め振り上げようとするのを見て、千里は咄嗟に叫んだ。
「攻撃が来るわ! よけて!」
黒い掌から発せられた稲妻のような光線が、2人の背後にあった銅像に当たり小爆発を起こす。千里とは反対の側に跳び離れて攻撃を躱したリンが、破壊された像と、煙を上げる掌をこちらに向けながら近付いてくる敵の姿を見ながら叫ぶ。
「あれがネジイエローね!」
「そういう事!」
一対一では全く勝ち目のなかったネジイエローに対して、さっき出会ったばかりのホウオウレンジャー・リンと共にどう戦うべきかを、千里は考えを巡らせながら自分の武器を手に取る。ネジレジアの手錠が外れた今、全ての装備が正常に動作するはずだった。
自分と同じくピンクの戦士の出方を伺う素振りを見せるネジイエローの注意を引くように、いつもよりも大振りな動きでメガスリングを構える。

その時、リンが腰のホルスターの武器を抜くこともなく、胸の前で片方の掌にもう一方の拳を押し付け、張りのある声で叫んだ。
「天風星! ……一文字竜巻!」
構えの姿勢から右手を手前に突き出すと同時に、その手の周りの景色が一瞬歪んだ。
「っ!」
腕をクロスさせて未知の攻撃に備えるネジイエローに向かって、銃弾でも光線でもないピンク色を帯びたエネルギーの塊が押し寄せる。それは、叫んだ技名の通り竜巻のように渦を巻く突風だった。
もつれ合う風がネジイエローの身体を巻き込み、錐揉みのようにその場で何度も回転させる。
「なっ…… 何なの? このエネルギーは……!」
土埃の中へ激しく転倒し、そこから片膝をついて立ち上がりながらネジイエローは驚きを露わにする。
(今だわ!)
弓矢のように大きく引き絞っていたメガスリングをそのまま発射し、長く尾を引く黄色のエネルギー弾をネジイエローの脇腹のあたりへ命中させる。
「くあぁあっ!」
爆発音と火花を上げてもう一度地面へ倒れた敵の様子を確認してから、千里はリンの方にもちらりと視線を送り、メガスナイパーの保持姿勢を初期状態へ戻す。

「うっ、くぅう……! 仕方ない、一旦撤退だわ…… 覚えておきなさい!」
そう言い捨ててネジイエローの姿が搔き消えるのを目にし、千里は安堵の気持ちと共に若干の高揚感を覚えながら、もう一度リンと顔を頷き合わせた。

「うまく行ったわね!」
駆け寄ってくるリンに、千里はまだ少し落ち着きを取り戻せないまま答える。
「う、うん。すごかったわ、今の…… 技?」
「そう、気力技ね! 私達ダイレンジャーは『気力』の力で戦うの」
「気力……」
メガレンジャーとは全く違う性質の組織であるらしいダイレンジャーのことに千里は興味を惹かれながら、さっき途中で中断された会話の内容を思い出す。
「そうだ、リン…… さんの探してた怪人は? まだこの近くに?」
そう言うと、リンの態度がマスクの下でさっきまでの明るい様子から変化したように思えた。
「ゴーマ怪人の『口紅歌姫』よ。ついさっきこの大学に現れて、私の友達がそいつにさらわれて……!」
「えっ」
「たぶんまだ大学内に居るんじゃないかと思う。もしかしたら他の人が襲われてるかも……!」
「大変! そんなことなら、私も……」
相手が自分と同じくらいの緊急事態の最中に助太刀をしてくれたことを知って、千里は申し訳ない気持ちに襲われる。私も一緒に口紅歌姫を探して戦う、と提案したが、リンはそれを断った。
「気持ちは嬉しいけど…… この事だけはどうしても私一人でなんとかしたいの」
「どうして? 他のダイレンジャーの仲間も居るんでしょう?」
千里の言葉にリンはしばらく俯く。
「友達がこの大学で襲われたのはきっと私を狙ってのことだし、私一人の力で助けないと…… これ以上他の人を巻き込みたくない。だから、あなたも……!」
そう言って顔を上げ、濃い緑に囲まれた小道に向かって駆け出そうとする。
「これが終わったらあなたの事、みんなに相談してみるから! 3時まで、この場所で待ってて! それじゃ!」
「え、えっ……」
慌ただしく走り去っていくリンの後ろ姿を追いかけるきっかけを失って、千里はその場に立ち尽くした。

次へ

コメント

管理者にだけメッセージを送る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。