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2019-01-20

迷鳥(13)

ホウオウレンジャーが叫ぶのをやめ、視聴覚を奪われつつも相手の出方を伺う態勢に変わったのを確認すると、ネジイエローは席に戻った。
そして、旧式のオーディオ・ミキサーの盤面の端に付いた大きなスイッチを、指でパチンと"ON"にした。

「うぁあああぁあっ!」
その時ホウオウレンジャーを襲ったのは、マスクの内側の空間に充満する黄色の閃光、そして轟音の電子ノイズだった。
電源ケーブルで高圧電流を身体に流された時のように、ピンク色の身体が激しく痙攣し、跳ね上がる。しかし拘束椅子の上ではそれ以上背を仰け反らせることすらできずに苦しみの絶叫だけが続いた。
「ぐあぁっ! んぐぅぁあああぁっ! あっぁああああ〜!」

数分間の闇と無音の世界からホウオウレンジャーが引きずり出された場所は、ねじくれた電気のエネルギーが光と音に形を変えて視聴覚を飽和させる嵐の中だった。
口紅歌姫の音波攻撃とは違う種類の苦痛。耳から脳にかけてをじりじりと侵食するのではなく、もっと直接的に脳神経に食い込む2種類の感覚が同時に襲いかかってくる。装置のスイッチが入ったその瞬間から苦痛のボルテージは最高潮に達した。
それは外側から見れば、二重になったマスクの間から黄色の光とジジジという雑音がわずかに漏れてきているだけに過ぎないのだが、マスクの内側でホウオウレンジャーは地獄を味わっていた。

耳を塞げないどころではない。マスクの黒いバイザーを軽々と通り抜けて飛び込んでくるイエローの光が、目を開けても閉じても、薄いまぶたを突き抜けて眼球に突き刺さってくる。どちらを向いても、黄色の光から目を逸らすことなどできない。耳元からやってくる大音響は言うまでもなかった。まるでドリルでマスクの側面を削り取られているような甲高い金属音が、自分の絶叫で掻き消されることなく響き続ける。
光と音、二重の苦しみが極小の空間で戦士を痛めつける。普通なら二層重ねのマスクを引きむしって投げ捨てているところだ。敵のマスクが外れなければ、頭を抱えてのたうち回っているはずだった。だが、粘着テープに固められた両手を動かすこと、床を転げ回ることすら今のホウオウレンジャーにはできない。できるのはただ首を左右に振り、息が切れるまで叫び続けることだけだ。
「あぁあああおぁっ! いやぁああぁああああっ!」

 ・ ・ ・

何が起こっていたのか理解できないまま狂ったような絶叫を繰り返していたホウオウレンジャーは、気を失う直前に突然、静寂と闇の中に放り出され、全身の力を抜いて椅子に身体を預けた。
「気分はいかが?」
ジンジンと痺れ、血を流しそうな感覚器に、ネジイエローの声はなぜかはっきりと聞こえた。
「うぁ…… あ…… これは……」
「あっけないわね。でもまぁ、その旧式のスーツじゃそんなものかしら?」
耳元で響くネジイエローの台詞に、ホウオウレンジャーは闘志を振り絞って両手の拳を固く握り締め、割れそうに痛む頭を背凭れからどうにか持ち上げる。視界は暗闇に閉ざされているものの、敵はおそらく自分の目の前に立っているはずだった。
「こ、こんな……もの……! ダイレンジャーの力なら……」
だが、言い終わる前にネジイエローは装置のスイッチをもう一度ONに入れた。
「があぁああああああぁ〜っ!!」

その一瞬で、ホウオウレンジャーは黄色い閃光と轟音の世界に引き戻される。すべての意識と感覚が目と耳からの刺激で埋め尽くされ、縛られている手足も、汗まみれのスーツの内側のことも感じ取れなくなる。
「ぐああああぁあ〜っ! うわぁっ、うぅわあああぁあーっ!」
もうただ、目の眩むようなイエローただ一色の世界、目を開けても閉じても逃れようのない強烈な感覚情報と電磁波の激流に身体が浸される。洗脳という言葉通り、強大で邪悪なエネルギーに脳が捻じ上げられ、正常な意識と思考を搾り落とされて、その代わりに黄色いノイズの渦が流し込まれていく。
どこにも逃げ道が、心の逃げ込む場所がない。強制的に過覚醒の状態を続けさせられ、気絶すらできない。ネジイエローのコピーマスクが接続された拷問装置が通電している限り、一瞬の途切れもない苦痛が続く。
「うわぁああ〜っ! あがあぁっ! ひぎゃあああぁああーっ!」
叫び、吠えることしかできないホウオウレンジャーは、自分では全く気付かないうちにスーツの中で失禁を繰り返していた。肺の中の空気を喉から絞り出すのと同じく、膀胱の中身が空になるまで断続的に生温かい液体を絞り出し、汚れた金属製の椅子の座面や脚をさらに汚していった。
「ほほほ、やはり汚いわね、人間は……!」

 ・ ・ ・

何時間続いたかと思われる光と音がまた一時中断した。イエローの悪魔の仮面を被らされたピンクの戦士が、汗と尿に塗れた身体をぐったりと弛緩させる。
「さあ、どうかしら……?」
喉が枯れ、声を出すことすら辛いホウオウレンジャーは、マスクの中でぜいぜいと呼吸音を響かせ、涎と涙を流しながら、見えない場所に居るネジイエローに向かって懇願する。
「も、もう…… や……め……」
「言葉が喋れる内は、まだまだよ」
そう言ってネジイエローは再び、オーディオミキサーの盤面のスイッチをパチンと弾いた。


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管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

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