FC2ブログ
2009-02-28

鳳凰展翅(1)

【西暦2043年。再び甦ったゴーマ族に立ち上がった新ダイレンジャーだったが……】

女怪人・口紅歌姫は、洗脳した数人の女性——悪魔聖歌隊を引き連れて新ダイレンジャーの前に姿を現した。
(あいつが… 口紅歌姫…!)
写真や映像でだけ見たことのあった紫色の怪人を目にして、ホウオウレンジャーは緊張に拳を握り締める。先代のホウオウレンジャーが死闘を繰り広げたという相手に、生半可な気持ちで挑むわけにはいかなかった。
「いくわよ! 口紅歌姫、あなたは私が倒す!」
「さすが威勢がいいわね、ホウオウレンジャー。お前に会う日をずっと待っていたのよ…!」

 ・ ・ ・ 

口紅歌姫は戦闘が始まってすぐ、ホウオウレンジャーを他のメンバーから引き離して誘い出すかのように自陣から離れ始めた。ホウオウレンジャーもその不自然さには気付いていたが、一騎打ちなら望むところだと思い、むしろその罠に立ち向かうつもりで口紅歌姫を追いかけていった。
だが、その先に待っていたのは一騎打ちの戦いではなかった。
最初に居た倍以上の人数の悪魔聖歌隊が物陰からぞろぞろと現れ、あっという間にホウオウレンジャーの周囲を取り囲んだ。その歌声が発せられた途端、脳を揺さぶるような衝撃が身体を走り抜けた。すぐに耳と頭が激痛で痺れ、全身にまで波及する苦痛が襲ってくる。
「あっ…あぐ…っ!」
ほとんど反射的に武器を取り落とし、耳を塞ごうと両手で頭を抱え込む。だが硬いマスクの側面をいくら押さえつけても耳を覆うことはできず、歌声は鼓膜、聴神経へと流れ込み続けた。
(な、何なのこの音…攻撃…!? マスクで防げない…!)
単なる痛みだけではない。耳から毒を注ぎ込まれているような、どうにもならない苦しさと痛痒感が首から下の神経を徐々に犯していく。
足元がふらつき、よたよたとその場を動き回ってしまう。音響に満たされたマスクを掌で叩き、撫で回しながら、武器を拾い上げることすらできずにホウオウレンジャーは身をくねらせ続ける。耳を塞げないことが頭では分かっていながら、あまりの辛さに両手をマスク側面から離すことができない。掌と耳の間のわずかの空間が恨めしく、いっそマスクを叩き割ってでもこの音から逃れたいと思ってしまう。
「やめ…やめて…!」
音波攻撃のシャワーを全身で浴びながら、ホウオウレンジャーは自分の意思では外すことのできないマスクを掻き毟り、ひたすらに悶えた。

合唱の指揮者の位置に立った口紅歌姫がタクトを動かすたび殺人音波の音程が微妙に変化し、耳から脳に指を突っ込まれて様々な部分を掻き回されていくような苦痛が襲う。
「ふぅあぁあ~~っ!」
側頭葉、頭蓋骨の裏側、延髄、眼球と視神経…… 自分ではマスクを脱ぐことさえできない頭の中を、女怪人の指がクチュクチュと這い回る。頭を抱えたまま身を丸め、また仰け反らせて、逃れようのない音の責め苦に翻弄されるホウオウレンジャー。脳や神経を爪弾く指先の幻覚がどうやっても消えてくれない。聖歌隊に前後左右を囲まれ、もはや全身に歌声が直接浸み込んで来るようにさえ思えた。口紅歌姫さえ倒せばこの攻撃を止められるかも知れないと考えても、歌声の壁に阻まれ、それを突破するどころか近づくことすらできない。身体がいうことを聞かず、反撃などとても不可能だった。
「うぁあっ! っぁああぁっ! 耳が! 頭がぁ…っ!」
遠巻きに自分を取り囲んだ敵に指一本触れることもできないまま、ホウオウレンジャーは目に見えない集中攻撃に延々と嬲られ続けた。

どれほど攻撃が続いた後か、三半規管を麻痺させられ、平衡感覚を失ってその場に倒れた戦士を口紅歌姫が見下ろす。歌声の勢いがほんのわずか低くなったが、頭の割れそうな感覚はなおも続いている。
「っはぁ……! はあ……! はあ……っ」
「私が本気を出せば、お前などいつでも殺せることが分かった?」
その台詞も音波攻撃の中では途切れ途切れにしか聞こえない。彼女からすれば祖母にあたる、20世紀に活躍したホウオウレンジャーから口紅歌姫の恐ろしさは一度だけ聞いたことがある。最初の戦いで口紅歌姫の顔に傷を負わせたホウオウレンジャーは執拗に付け狙われ、憎しみに満ちた攻撃を何度も受けたという。この歌声のことも教わったはずだった。だがここまで手も足も出ずに一方的にやられるとは考えもしなかった。激しい苦痛に耐えながら、ホウオウレンジャーは精一杯の眼光で口紅歌姫を下から睨み付けた。

歌声が止んだ。口紅歌姫は恐ろしい力でホウオウレンジャーの首を掴み、細い身体を軽々と宙に吊り上げる。
「ぐうっ! 放せ…っ!」
「お前も昔のホウオウレンジャーと同じ名前、リンと言うらしいわね」
喉を掴んだ手に力が込められ、絞り出すような呻き声が漏れる。
「この傷の恨み、お前で晴らさせてもらうわ」
口紅歌姫は今も頬に残る大きな傷を撫でると、手に掴んだホウオウレンジャーの身体と共に姿を消した。

次へ

コメント

管理者にだけメッセージを送る

No title

はじめまして。PSH管理人のYTです。
この度はSSを書いていただき有り難うございました。

もしよろしかったら、こちらのサイトに掲載させていただきたくお願いに参りました。

またこちらから、リンクを貼らせていただきたいと思いますがいかがでしょうか。

どうぞよろしくお願いいたします。

ご連絡ありがとうございます

お返事が遅れまして申し訳ありません。
小説を書き始めるまであこがれのサイトだったPSH様に掲載して貰えるというのは光栄です。

本作はまだ執筆途中ですが、今月中にあと3、4回分を一気に公開するつもりです。いま公開されている分を先に転載して頂いても、完結してからでも結構です。
もちろん、リンクも大歓迎します。
プロフィール

鳥籠

Author:鳥籠
管理人の名前も鳥籠。
2chエロパロ板のヒロピンスレでの活動を経て個人ブログを立ち上げました。

サイトの説明
目次

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ