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2017-04-30

迷鳥(2)

「……っ!?」
重力の感覚が戻ると同時に、ずっと希薄だった地面の実体が膝や前腕に感じられてくる。
メガイエローは柔らかな陽光に照らされた、ざらついたアスファルトの上にいつの間にかうずくまっていた。
「ここは?」
手錠で繋がれたままの両手で上体を起こし、辺りを素早く見回す。緩いカーブを描く、緑の植え込みに挟まれた小道。公園か何かの公共施設のようだった。遠くから人の談笑する声が聞こえ、先程までの逃走で通過してきた場所とは全く違う、日常の空間に戻ってこれたという雰囲気がある。
自然と小さな溜息が口をついて出る。手足には疲労が残り、手錠の装置は黄色い点滅とともに妨害電波を発し続けていたが、メガイエローは少しだけほっとしてその場に立ち上がった。

道に沿って歩き出すと、耳慣れた鐘のメロディのチャイムがどこからか風に乗って聞こえてくる。
「学校……?」
木々の向こうに校舎を思わせる建物が見えたが、自分たちの高校のものではなかった。ここがどこなのか、そして東京からどのくらい離れた場所なのかを知りたいが、メガスーツのサーチ機能はやはり働かない。幸いネジイエロー達がすぐに追ってくる気配はなく、あの建物の表札か何かを見て現在地を確認しておいた方が良さそうだった。
念のためマスク内部の情報表示モードを切り替えてみるうち、場所や方角だけではなく、現在時刻や日時を示す数字が文字化けを起こしていることに気付いた。
(まずい…… もしかしてスーツの機能が……)
改めて気を引き締め、身をかがめながら小走りで建物の方へ向かい、途中にあった銅像の台座の陰に身を隠す。学校の校舎のように見えた建物には、メガイエロー、千里自身よりも少し年上の若い男女が鞄やテニスラケットなどを抱えて出入りしていた。大学の敷地だったのかと納得し、もしかしたら今の自分の助けになるような人物が居ないだろうか、たとえば研究室に…… と考えながらもう一度身を乗り出したとき、唐突に後ろから声を掛けられた。

「誰!?」
緊迫した調子の、若い女性の声にメガイエローは思わず首をすくめた。
(しまった……)
メガスーツの姿で、しかも手にこんな目立つ手錠を嵌められた状態で大学の関係者に見つかったら…… と、恐る恐る振り向いたメガイエローは、呼び止められたとき以上の驚きで目を見開いた。

そこに立っていたのは、身体に密着したピンクと白のスーツで全身を包み込み、首から上もピンクを基調にした配色のフルフェイスヘルメットで覆い隠した、つまりメガピンクにも似た装備を身に付けた人間だった。
「みく…… メガピンク?」
思わず仲間の名を口に出してしまってから、"誰?"と聞かれたのにそれは有り得ないと思い直す。しかし、目の前の人間は見たことのないスーツとマスクを着けてはいながら、なぜかメガレンジャーの敵ではないという気がした。例えば、少なくともネジピンクが化けた姿とは思えなかった。
だが相手は警戒した様子を緩めず、地面に片膝を付いたメガイエローが両手の手錠をカチャリと鳴らしたのを見て、即座に右半身を後ろに引き、左手の拳を前に突き出した拳法の構えを取った。
「あなた、やっぱりゴーマの……!」
「え、えっ……!?」

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2017-04-30

迷鳥(1)

メガイエロー・千里は深い霧の中をよろめきながら走り続けていた。
煙のような、湯気のような白い浮遊物であたり一面が覆われ、数メートル先の風景も見通せない。その霧以外には何も存在しないように思える空間を、ぼんやりとした光だけが遠くから照らしてくる、その方向を目指して駆け続ける。
「はっ、はっ……!」
イエローのメガスーツに包まれた身体、白いブーツを履いた両足が地面を踏みしめるたび、両手首を繋ぐ複雑な形状の手錠がカチャカチャと音を立てる。
ネジイエローからの急襲を受けて嵌められた手錠は見た目以上にずっしりと重く、両手を身体の前面で中途半端な位置に固定して、逃走を妨げるばかりか様々な装備品の使用を不可能にしていた。手錠の中央部から発信される妨害電波も、I.N.E.T.からの捜索と同時にスーツ側からの各種サーチ機能を制限しているようだった。

(一体ここは…… どこなの……!?)
ネジレンジャーのイエローとピンクの仲間割れに乗じて何とか逃げ出すことができたものの、岩山や工場地帯、ゴーストタウンのような市街地と様々な場所を駆け抜け、ようやく追跡を振り切ったかと思った先がこの謎の空間だった。不規則なノイズが前後左右から響き、いつ目の前にネジイエローの姿が現れるか分からないと思いつつも、前方の微かな明かりだけを頼りに、疲れ切った手足を無理やりに振り立ててひたすらに進んでいく。

明かりの強さが少しだけ増したように感じたとき、霧の中で何度か経験した目眩の感覚がもう一度やってきた。
「あぁ……? あっ?」
まるで重力が突然失われたようだった。身体が宙に浮き、空間全体がぐるりと回転したかと思うと、メガイエローは眩しい光の中へ吸い込まれるように投げ出された。

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2017-04-30

意識調査

Twitterに入り浸っているせいでサイトの放置ぶりがひどくなってきて申し訳ありません。
新作SSももうすぐにアップし始めるところですが、その前に、2月に外部WEBサービスを使って作成した「戦隊スーツフェチの皆様へアンケート」のことをこちらでも告知します。

こういったフェチ小説を書く上で、戦隊スーツの材質や機能のことを読者がどう想像しているかは気になるところで、2013年にもこういう記事を作ったりもしましたが、やはりアンケートサービスを使って広く意見を求めるべきだろうとずっと思っていたのを、ようやく実行に移しました。

設問は……
○あのスーツの内側には何か着てると思いますか?
○変身した状態でスーツは脱ぎ着できると思いますか?
……などなど 、いつもの調子でR-18表現も含まれていますが、そんな内容で77名(2017年4月末時点)の方の意見が得られたのは貴重だと思います。

これまでもTwitterなどで周りからの意見を取り入れてスーツの通気性などの表現を少しずつ変えたりしているので、自分の好みと読者の好みをうまく擦り合わせる材料にしたいと思っています。
また、フェチでない人も「フェチじゃないけど……」というチェック欄を設けてありますので、よろしければ回答してみてください。

そして、設問の最後の方には自由記述欄として好きなスーツやヒロイン、作品を書いていただくようにしてあります。自分と同じ好みの人が多かったり、「えっ、それもスーツ扱いなの?」と思うような回答があったりして発見があります。
回答結果は選択欄・記述欄ともにこちらから見れるようになっています。記述の内容は自動集計されないので、近いうちに人力で集計してみます。

2017-03-26

嚥下(3)

「あっ! あぁ~っ! ううああぁ~っ!」
完全な闇に閉ざされたドーラブーガラナンの消化管の中で、メイは四方八方から身体を揉み込み、押し潰しにかかってくる粘膜の壁に翻弄されていた。
腕も脚も、身体中のどこもかしこもが、ヌルヌルとした粘液を纏った内臓壁に前後左右から隙間なく密着され、グローブに包まれた指の一本一本さえそうした肉のマッサージを受けているように感じられた。すべすべとした滑らかなスーツ表面を延々と舐め転がされ、一瞬の休みもなく襲ってくる異様な皮膚感覚にメイは声を上げ続ける。
辛うじて肉の責めから逃れられているのは、硬質なマスクに包まれた頭や、ブーツの中の足元だけで、それもこんな事を続けられていればいずれ脱がされてしまいそうだった。ニチャッ、ジュルルという粘音がひっきりなしに鳴り響き、自分の呼吸音や喘ぎ声さえ掻き消してしまうほどの音がマスクを満たしている。

そのまま数分以上は揉まれ続けるうち、体力と共に体温を奪っていくようだった冷たい肉と粘液が、だんだんと温まり始めた。
長時間同じ場所に留まり続けていたため、周りの肉がメイの身体で温まりきったのかと最初思ったが、やがてそれだけでは説明が付かないほどの生温かさ、熱さがスーツの生地越しに感じられ始めた。肉壁の動きはそれまでと変わりないが、粘液に関しては心なしか分泌されてくる量が増し、そして粘り気の少ないさらさらとした物に変わったような気がする。
(し、消化液……!?)
食道をゆっくりと滑り落ち続けた身体は、もう胃袋にまで到達しているに違いなかった。メイはスーツが溶かされ生身の体が消化されていく恐怖に震える。先に呑まれた仲間たちの身体やスーツが周囲に残っていないことから、ドーラブーガラナンに呑まれた者は跡形もなく消化されてしまうのだとしか考えられなかった。
「あ…… 熱い……っ!」
ぐちゅぐちゅと音を立ててスーツ越しの身体を咀嚼する内臓の壁がますます熱を持ってくる。メイは腐食性の液体に晒されたスーツがぶくぶくと泡を立てて消化されていくところを想像するが、高まってくる熱気はそうした種類のものではなさそうだった。
指の拘束が緩まったような気がするグローブの手を握り締めると、自分の汗でグローブの中がぬるついた感触はあるが、外の液体に接している部分が溶けている様子はない。腕や背中のスーツ生地も同じだった。いくら待っても、消化液が肌に触れて強い痛みを発するようなことも起こらなかった。

酸欠と合わせて、スーツの中でのぼせてしまいそうな熱を全身に感じる。だが、それは全く苦痛ではなく、むしろ消化管壁からの手荒な扱いの痛みを和らげてくれるもののように思えた。
発熱が起きているのはスーツの外側ではなく、メイの身体の方だった。先程から分泌され始めた粘液の影響で、メイの全身が異常な興奮を帯び始めていた。液体をほとんど通さないはずのスーツだが、ドーラブーガラナンの濃厚な体液を延々と揉み込まれ、獲物を「消化」するに必要な成分はすでにメイの素肌まで塗りこめられていた。
「うあ……っ! っああぁ……ぁ!」
蠕動する肉壁によるマッサージは今や、食物を柔らかくするための咀嚼ではなく、栄養を吸収するための動作に意味が変わっていた。相変わらず手足は肉壁に巻き込まれて自由を奪われたまま、消化粘液の纏わりついたスーツの内側で全身を揉みほぐされて、気の遠くなりそうな快感と共に身体のエネルギーが奪われていく。
「は……っ! はぁあ……! あぁ……」
身体の表面ではなく、内側から消化され、栄養を吸い出されていくような感覚。その快感に抗おうとする精神力を真っ先に蕩かされて、メイはもう暴れることも叫ぶこともせず肉壁の動きに身を委ねていた。

何も見えない暗闇の、どことも分からない方向から、4人の仲間たちが同じ消化の快楽に浸されて低く呻く声が聞こえるような気がいた。
(あ…… あぁぁ…… 気持ち…… いい……)
終わりのない、長く深い快感の中で、メイの意識は次第に闇に消えていった。

(完)
2016-09-19

嚥下(2)

怪物の口中でメイの視界が一瞬暗黒に閉ざされた。そしてそのとき、メイが闇とともに強く感じたのは、意外なほどの冷たさだった。カエルのような姿をしたドーラブーガラナンの湿った肉は、水に濡れた衣服を首に巻き付けられたような温度と感触でスーツ越しにメイの肌に感じられた。
生き物の体内とは思えないほど冷たく、しかし粘り気のある唾液が、ピンク色の滑らかなスーツの背に、腹に、塗り付けられる。素肌の上を薄い素材だけで護っているスーツの表面を粘液でマッサージされて、メイは生理的な嫌悪感に背を仰け反らせた。
「ふぅああ! あはぁああぁ!」
窮屈な闇の空間で、マスクの後頭部が湿った肉壁に押し付けられるが、奇妙な弾力とともに頭が押し返され、そして逆に膨らんできた壁によって、胸から上が揉みくちゃにされた。

「あ~んっ、んがっ、んがっ……」
ドーラブーガラナンが口を開閉するたびに上下の牙がメイの背と腹、そして腕に食い込むが、その痛みよりも口腔粘膜の感触の方がずっと耐え難く、メイは牙の先端が身体に突き刺さるのも構わず身をくねらせ、そして両脚をじたばたと駆けさせて口の中から上半身を引き抜こうとする。
「あぁっ、やっ、放してっ!」
だがその必死の抵抗はドーラブーガラナンにとっては獲物が毎度繰り返すいつもの無駄なあがきに過ぎなかった。メイの腰から先を空中へ振り上げるように自分の上体を大きく仰け反らせ、獲物が真っ逆さまに喉の奥へ滑り込んでいくようにその重心を移動させる。
「あっ、あぁあっ!」
それまでは口から喉へのやや狭いくびれに肩で引っかかっていたメイの身体が、この動作によって一気に一段奥へと嵌り込んだ。口腔内にできた急な坂を頭から滑り落ち、ジュボン、と音を立てて肩から先が密集した肉質の中へ入り込んだのが感じられた。濡れ雑巾を思わせる粘膜の襞がきつく首に巻き付き、じゅるじゅると締め上げてくる。
(く、苦し……い……)
息の止まってしまいそうな感覚に上半身を強く震わせると、首周りだけではなく、胸や腰に至るまでぎっりと肉襞に隙間なく取り巻かれているのが分かった。特別に首を狙われたのではなく、狭い食道で全身が締め付けられており、マスクで護られた頭部だけが無事なのだということに思い至る。
何しろ上半身をほぼ全て呑み込まれ、マスクの中に全く光が届かないのだ。自分の身体がどんな姿勢にされているのかさえ、拘束感のためにすぐに知ることができない。こんな状況でもまだ息ができ、悪臭や消化液の影響から逃れられているのはせめてもの救いだったが、それでも闇の中で何も見えず、そして胸や首を四方から満遍なく圧迫された状態では、脱出どころか意識を保っているのが精一杯だった。

(手……! 何か掴むもの……!)
両腕を胴体に縛るように巻きついていた太い舌がいつの間にか外れていることに気付き、どうにか身体を上へ押し戻そうとしたメイは手足をもう一度ばたつかせた。しかしその時、自分の身体のうち怪物の体外に出ているのがすでに膝から先のわずかな部分だけであることに気付き、愕然とした。
メイ自身が気付かないうちに、頭を下に逆さまになっていたメイの全身は摩擦のない食道の粘膜をゆっくりと滑り落ち続けていた。声にならない恐怖の叫びとともに激しく身をくねらせるが、その動きが余計に滑落のスピードを速くする。もう膝も動かせなかった。外から見たドーラブーガラナンの口には、メイの白いブーツだけが尖った歯列の間から突き出し、足首の関節をもぞもぞと動かしているのが見えるだけだった。
「あぁあっ! あっ、助けて! 誰か……!」
ミチミチと身体を取り巻き、締め付けてくる肉の閉塞が腰から下半身にまで及び始める。ブーツの甲が最後まで引っかかっていた怪物の口がばくんと開き、また完全に閉じると、プテラレンジャー・メイの姿は全く外界から見えなくなった。

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